闇の夜に咲く、一輪の華

「涼介無事ついたらしい、良かったな。それより、昼言ってたのってこのことか?」

「…あ、うん。修学旅行で零夜と寝るのって夢だったから。」

「…それにしては部屋の入り方が穏やかじゃねえな!さすが総長。」

「まあこのぐらい出来ないとね。」

「あの二人も色々話すこと、あるんだろうしな。」

「…そうだね、あの二人のお兄さんまだ目を覚まさないんでしょ?」

「……あぁ、そうらしい。もう三年だぞ。」

三年前の今頃、二人のお兄さん達は一緒に旅行に出かけた先で青竜に襲われた。
二人とも意識不明の重体。
脳死や植物状態にこそ陥らなかったものの、三年近く一切目を覚ましていない。

激しい脳の損傷が原因で、医者にもどうすることも出来ないらしい。
意識が戻ってからじゃないと脳の詳しい状態も分からないし、第一目覚めるかどうかも分からない。

私がかつて経験したように、人間というのは長い間体を動かさないと筋力は極限まで落ちてしまう。
一年間まともに動いていなかっ私でさえ、しばらく歩くことすらままならなかった。

そうなると、二人がもし目覚めた時が心配だった。だが、二人は毎日欠かさずお見舞いに行っている。ふたりがマッサージしているおかげで、筋力の衰えにはブレーキがかかっているらしい。

「毎日お見舞いしてるんだって。」

「…涼介も言ってた。でも一度も目覚めないんだもんな。」

「…確か三年前って青竜の襲撃が集中してたもんね、一般人を襲うことも多かったはず。」

「これ以上美来や涼介みたいな目にあう人が現れないよう、俺たちは全力で青竜を潰さなきゃならねぇな。」

零夜の一言から感じる強い決意。その気持ちは私も一緒だ。

私が総長になる前、ずっと前初代の時から麗龍は何人もの組員を青竜に殺られた。
私が総長になってからももう既に四人亡くなった。

守ることが出来なかった私の責任でもある。
だからこそ私は絶対に朱雨をこの手で潰す。

「きっと、今年度中に青竜は襲ってくる。一秒たりとも気を抜かずに、日々訓練に励む必要があるね。」

「あぁ、俺も早く鍛えねぇとな、そろそろ傷も塞がってきたし。それより、修学旅行の夜にこんな話ばっかりってなんか嫌じゃね?明日も早いし今日はなんにも考えずに寝ようぜ。」

「…そうだね、じゃあもう電気消すけどいい?」

「俺が消すから先寝てろ。」

「…うん、ありがとう。」
私たちは久しぶりに緊張せず、ゆっくりと眠ることができた。