学校での旅行あるあるだとは思うけれど、実際初日は移動だけで一日が終わってしまうものだ。

空港に着いたのが午後二時。
そこから手続きや移動に時間がかかって、結局ホテルの部屋に着いたのは、午後五時過ぎ。

これでは観光する余裕はない。


六時半までは自由時間で、その間に制服から着替えて夕食会場に向かうことになっている。
自由時間のうちは、班で集まって明日の予定について話し合ったり、売店を見てみたり、外のプールサイドでくつろいでみたり、各々好きに過ごしているようだ。

私も美来と同室で、二人で荷解きをした後会話に花を咲かせているところだ。

ホテルだから二人一部屋なのだが、どうしても裸を美来にしか見せられないから、懇願して美来と同室にしてもらった。
この背中を誰かに見られたら終わりと言っても過言ではない。

「そうだ華月、背中見せてよ。」

「え?いつもお風呂で見てるじゃん。」
どうやら美来は背中のタトゥーが気に入ったらしく、見せて欲しいと頼んできた。

「嫌だな〜華月。私お風呂で友達の背中ジロジロ見るような変態じゃないもん!」
どうやら背中をよく見てると思われたのが心外らしい。

「そう?まあいいや、はい。」
下着をとって見せた背中一面に彫られた龍。

「……わあ、改めて見ると迫力がすごいね…。さすが総長。」

「これ、零夜のお兄ちゃん、朝日さんのデザインを元にしてるの。

零夜の背中にもこれとほぼ同じものが彫ってある。

…あの日、私のせいで朝日さんは亡くなったから…絶対に青竜を潰すと心に決めてこれを彫った。」

「…華月のせいだなんて………。」

「…分かってる。みんなきっとそう言う。

だけど、あれは私のせい、あの場に私がいなければ…朝日さんは死ななかった。
零夜は一人にならずに済んだ。」

息が苦しい、あの日からずっと思い出す度に苦しくなる。私は朝日さんを殺してしまった、と言ってもいいぐらいだ。
零夜からたった一人の兄弟を奪ってしまった。誰よりも大切な兄を…。

お兄ちゃんが与えてくれるはずだった愛情を私が代わりにあげたい。
そう思って私は毎日零夜と接している。


「夕飯終わったら、ベランダから零夜の部屋に行くね…だから今日は涼介と寝て…って無茶だよね…。とりあえず今日は帰ってこないと思う。」

「華月やるじゃん〜!別にいいよ、涼介と話したいこともあるしさ。気にせず行ってきなよ。」

「うん、ところで明日は美来達の班はどこに行くの?」

「私たちは国際通りを一通り巡ったあと、近くのビーチで軽く水遊びって感じかな〜、女子が多めの班だし〜!華月は?」

「少し北の方に行ってカヌーをしに行く予定。羽鳥がバス手配してくれるって。」

「それもいいね〜、楽しそう、ってそろそろご飯じゃん、華月行こ。」