『んー、ではね、SHRをね、はじめてね、いきます。』
突然教室に入ってきたのは私たちの担任。とても喋り方に癖があって少し苦手だ。

『はい、みなさんね、そろそろあれの時期ですけどね、分かりますか?

そうですね、研修旅行ですね。』

私達が通っている学校は在籍中二回修学旅行のようなものがある。

一回目は国内で沖縄、二回目は海外でフランスと決まっている。

私たちが今回行くのは沖縄で、一年生の十一月に行くことになっている。

「えーっとですね、全校放送でね、詳しくね、話をしますのでね、皆さんよく聞いてくださいね。」

さっきまで騒いでいた人たちも、一斉に話すのをやめて、放送に聞き入る。




『えー、まず今回の研修旅行ですが、十一月十日から、十五日にかけて行くことになっています。

知っていると思いますが、行先は沖縄です。

………二日目には各班で自由行動を……島に移動し…三日目の夕飯は……最終日は午後六時に駅で解散となります。』
学年主任と思われる先生による日程の説明が永遠と続く。


『……まあ、日程はこんな感じですね。えー、何か質問などあれば各担任の先生もしくは私に聞いてください。

はい、そしてですね、何よりも重要なことがあるので話が長くて飽きている人もいると思いますが、よく聞いてください。
今回の研修旅行はもちろん飛行機で行くわけですが……』

『…皆桐ヶ谷さんを知ってるか?
一組の桐ヶ谷華月さんだ。
えー、今回の修学旅行は桐ヶ谷さんのお父様、あの『Crystal』の会長でもある桐ヶ谷龍之介さんのご支援のもと、飛行機はエコノミークラスではなく、全員プレミアムエコノミーに搭乗することになった。

皆には桐ヶ谷さんやお父様に感謝する気持ちを忘れないでもらいたい。
もし桐ヶ谷さんやお父様と話す機会があったら、一言お礼を言うように。

話は以上です。放送後は各クラスでホームルームを行ってください。』

チャイムと同時に先生の放送は終わった。それと同時に私に降り注ぐ視線。
まさか、こんなことになるとは思っていなかった。

確かに私はお父さんにプレミアムエコノミーにして欲しいと言ったが、それはみんなのためではなく、零夜のためだ。

背の高い零夜にはエコノミークラスのシートは狭すぎる。
病み上がりだし少しでも快適に過ごして欲しくて、お父さんにお願いしたのだ。


零夜だけというわけにもいかないし、大した金額にもならないから全員プレミアムエコノミーにしてもらったのだけれど、まさか全校放送で流されるとは思ってもいなかった。

しかもお父さんが『Crystal』の会長であることは美来と涼介にしか言っていない。

あとは族の皆が知ってるだけで、言ってなかったというのに微妙なタイミングで先生にばらされてしまった。

ただでさえクラスメイトとあんまりコミュニケーションを取らないせいで浮いてるというのにこれはあんまりだ。