ブーブッーブッ。携帯のバイブ音が鳴り響く。


「…なに!零夜苦しい!?」
着信は零夜からのSOSだ。

零夜の反応を待たないまま、私は陽影の屋敷へ急いだ。
廊下を全速力で駆け抜け、秘密の通路で陽影の屋敷に侵入した。


急いで三階へ駆け上がり、暗証番号を入力して部屋へ入る。


「お!早い。」
すると零夜は至って平然としている。

「…え、なに?苦しくないの?」

「う〜ん、華月とイチャイチャしたくて苦しい。」

「…帰る。」
不意にこんなことを言われたものだからきっと私の顔は真っ赤だ。

「とかいって華月も俺とイチャイチャしたいんだろ〜?」
余裕たっぷりでニヤニヤしながらベットに座っている零夜。

零夜は意地悪だ。
私が今まで散々気持ちを我慢してきたのを知っていてこんなことをしてくる。


「ほらここおいで。」
まだパジャマ姿のラフな格好の零夜なのに、そのスタイルと顔面の整い具合故か、相当な色気を放っている。

しかも透き通ったグリーンの瞳で見つめられるから、私に拒否権なんてない。

諦めて零夜の前に座る。

「ずっとこうしたかったんだよなぁ。」
と零夜が言うと、急に後ろから、抱きしめてきた。

十八歳にもなって、身長の伸びが止まらない私と、十九歳になっても身長の伸びが止まらない零夜。

決して華奢じゃない私の体も零夜の大きな体にすっぽりと覆われてしまった。

今までこんなに密着した事はないし、しかも零夜があまりにも優しく抱きしめてくるから、私は心臓が口から飛び出るのではないかと思うほどドキドキしていた。

「…あったかい。」私が口にできたのはたったこれだけ。

「華月って普段は完全無欠な総長のくせに、こういう時だけ超可愛くなるよな。反則だろ。」

「……あんまり可愛いとか言わないで…」
あまりの恥ずかしさに後ろを振り向きながら言うと、至近距離で零夜と目が合った。

「本当にそういうとこだよな、こんなこと言われて我慢できねぇって。」
零夜は私の髪の毛を一束耳にかけると、優しく唇を重ねてきた。

唇からも、体からも零夜の温かさを感じて、恥ずかしさで暑くなる。

しかも零夜はこれまでの分を取り返そうと言わんばかりに、長くて深いキスをしてくる。

全てが優しくて、まるで私を怖がらせないようにしているかのように。
あまりにも大人なキスに、余裕がなくて恥ずかしくて仕方ないけれど、零夜と気持ちを通じ合わせることが出来たことが幸せだ。


ようやく、私から唇を離した零夜。
離れた感覚がして目を開けたけれど、そこには直視できないほどのかっこよさの零夜がいて、私はますます顔が赤くなったと思う。

それと同時に離れてしまったことがなんだか寂しくて、今度は私から求めてしまう。

「もっとしたい……。」
こんな恥ずかしい台詞、普段の私なら絶対に言わないし、言えない。
だけど、今はただこの幸せを噛み締めていたい。