「零夜…そろそろ目を覚ましてよ…。いっぱいいっぱい伝えたいことがあるのに……」

先日までどんなに願っても出なかった涙が、今では当たり前のように目から溢れる。

『零夜が、私の涙を取り戻してくれたんだよ』
そう伝えたいのに、ベットで眠っている零夜は一向に目を覚まさない。

「思ったより零夜の顔色が良くて安心したよ。俺はそろそろ行くな?」
とはいえ零夜の顔は青白い。

いつもみたいに笑ってよ…そんな青白い顔で寝ていないで私に笑いかけてよ。

「うん、気を付けて帰ってね。」
病室を出る修也に手を振りながら零夜を見つめる。

「零夜……。」
私がそう呟いた瞬間、零夜の頭が微かに動いた気がした。

「零夜…?」

零夜の長い睫毛が動いた。

「…零夜!」私の大好きなグリーンの目が再び姿を現した。

「…華月?」

「……零夜ぁぁぁああ!」
私はすぐさま零夜に抱きついた。久しぶりに零夜の声を聞いて涙が止まらない。

「…もう目が覚めないのかと思って怖かった…。零夜までいなくなっちゃったらどうしようって……うっ…。」

「俺はずっと華月のそばにいるから。それより…華月涙が……。」
一旦顔を離し、零夜の目を見つめて言う。


「本当はずっと零夜と恋愛する気はなかった。怖かったの…。

でも一昨日、零夜が倒れて気づいた。このまま零夜が死んじゃったら本当は零夜のこと愛してるのに伝えられないままいなくなっちゃうんだなって……。

それに…夏希さんに言われて気付いたの。私、零夜の気持ち全然分かってなかった…零夜はこんなに私の事想ってくれてたのに、私は………。

零夜、零夜が私の涙を取り戻してくれたんだよ…。」

零夜は泣いた。目から一筋の涙が零れ落ちている。

「…華月…。愛してる。ありがとう。俺のそばにいてくれて。」
そう言いながら私の頬を伝う涙を拭ってくれる。

「…なぁ、華月。」

「…ん?」

「キス、したい。」ストレートな零夜の告白に顔が赤くなるのを感じる。

「…うん、いいよ…。」でも、零夜はまだ傷口が完全に塞がってなくて痛そうだ。

私は一歩零夜に近づき、そっと唇に自分の唇を重ねた。

初めてのキス。なぜだか、涙が出てきた。