「それにね、零夜の母親として言わせてもらうと、零夜の気持ちはどうなっちゃうの?って話なの。

華月ちゃんには昔あんなことがあって、人を愛するのが怖いのは分かる。

だけど、そんな華月ちゃんを一生かけて守っていきたいと覚悟を決めた零夜の気持ちはどうなんだろう?

零夜はあの事件の日から、脇目も振らず華月ちゃんだけを見てきた。

守るなんていうほど華月ちゃんが弱くないのも知っていて、それでも支えていきたいといって、私たちの反対を押し切って高校入学を三年見送った。

それぐらい零夜は華月ちゃんを想っているの。

それなのに拒絶されて、挙句の果てにそれが最期だった、なんてことになったら零夜があんまりにも可哀想じゃない?

この世界で生きていく以上、死のリスクと隣り合わせなことは私も重々承知だけど、それでも愛してあげるってことは出来ないのかな…?」

夏希さんの言葉を最後まで聞いた時、私は涙でぼやけて周りが見えなかった。



なんで、私は理解できなかったんだろう?

目が覚めたあの時から、零夜は私の事だけを見てくれた。
全てを犠牲にしてまで、私を支えてくれていた。

「うわぁ…わああああああああ…」
病院の真ん中だということを忘れてしまうほど私は悲しくて悔しくて自分が情けなくて涙が止まらなかった。

何度も嗚咽した、子供みたいに泣き叫んだ。
何年ぶりだろう、母が亡くなって以来だろうか。

なんで気づかなかったんだろう…

支えていきたい、その言葉を聞いた時、もう私の目からは涙が溢れてやまなかった。
心からの涙だ。ようやく、私は涙を取り戻した。



プロポーズみたいだ、と感じさせる零夜の言葉。

『支えていきたい。』その言葉が胸に強く響く。

零夜だって私が弱くないのを知っている。
それでも力になりたいと、支えていきたい、と覚悟を決めてくれた零夜。
零夜は私が思っているよりもずっと、私のことを想ってくれていたんだろう。

なんで気づけなかったんだろう?
あの日、あの後零夜はどんな思いをしたのだろうか?

きっと友情が崩れるのを覚悟で伝えてくれたはずだ。
それに、過去に傷を抱えている私のことも把握した上で、思い切って想いを伝えてくれた。

どれだけ勇気がいることだったのか、それを想像するだけで、また涙があふれる。