『翠光。お前に復讐する時が来た。』
慎二は必死に怒りを抑えながら、翠光に言う。
固く握られた拳は今にも血が滲み出しそうだ。

「復讐？なんだてめぇ。」

「…お前、忘れたのか？三年前、俺の弟を殺っただろうが！」
慎二は冷静さを失った。
弟を傷付けた記憶すらない翠光が許せなかった。

「…誰だ？分かんねぇ。一人一人覚えてらんねぇよ。」翠光はフッと鼻で笑った。反省の色すら見えない。

「そうか、じゃあ思い出させてやるよ。」
慎二は思い切り振りかぶって、翠光に拳をぶつける。
その威力は凄まじく、おそらく今の一発だけで翠光の肋骨は二本折れただろう。
そのぐらい慎二の勢いは凄かった。

「ぐはっ…」
体制を立て直せずにいる翠光にもう一発、今度は顔に拳をぶつける慎二。
翠光の口の中は切れ、血を吐き出している。

「なかなかやるじゃねぇか。」
翠光は反撃を始める。
だが、その拳や蹴りは一切慎二には当たらない。

「…チッ…なんだよこいつ。」
明らかに怒りを含んだ声で言う翠光であったが、その間も全ての攻撃を躱される。

「どうだ？反撃もできねぇままただひたすらやられ続ける気分は？
思い出したか？お前が俺の弟にやったこと。」
慎二は鳩尾付近に蹴りを入れた。
今の一発が相当効いたのか、翠光はその場に倒れ込む。吐いた唾には血が混じっている。

本気になった慎二を目の前にし、翠光はひとたまりもなかった。圧倒的な実力差だ。

倒れ込んだままの翠光の足や手、体の至る所に蹴りを入れ、踏みつける慎二。
もはや今の慎二の脳内には復讐しか無かった。