「姉ちゃん、お前のこと憎んでるわけじゃない。ちゃんと心の中では愛してる。」

先生の声が私の頭の上で聞こえる。

「帰り際に、言ったんだ。直のことよろしくお願いしますって・・。あの子泣き虫だから、お願いしますって。」


私は、溢れる涙を止めることができず、先生の胸にしがみついて泣いた。

私とお姉ちゃんは不器用な所が似てる。

お姉ちゃんの笑顔が瞼の裏に浮かぶ。



やっと泣き止んだ私のおでこに・・・そっとキスしてくれた先生。

「卒業まで、お前の気持ちしまっとくって言ったのに、俺がこんなんじゃダメだな・・」

先生は小さくため息をついて、ラジオの音量を上げた。




「俺・・・教師・・失格だな。」


先生・・・

そんなこと言わないで・・


「先生に・・私すごく助けられてるんだよ・・失格なんて・・言わないで。」


先生は、私の肩に手を置き、私の体を先生から離す。

そして、大きく息を吐いた。


「助けられてんのは、俺の方。お前は気付いてないかも知れないけど・・」

先生の低い声が、肩から私の体に響く。

「私、先生に支えられてるんだ・・先生がいてくれるだけで、強くなれる・・」


ラジオから流れる曲は、私もよく知ってる曲だった。

なんだかとても切なくて、胸に染み込んでくる曲・・


「俺の方が、お前に支えられてる。救われてる・・・」


呟くように、そう言った先生は大きな手で私の頬に触れた。

先生の言ってくれた言葉は、すごく嬉しい言葉・・・


でも、どういう意味か理解できない子供な私はただ先生を見つめてた。


私、何もしてないよ。

先生の支えになるようなこと、何もできてないよ。

どうして・・・支えになってるんだろ・・


「せんせ・・私も、先生の為に何かしたいよ。先生は、いつも私を幸せにしてくれてるもん。」



先生・・・



もう一度、ぎゅ~って強く抱きしめてくれた先生・・