「矢沢 直!!」


「・・ハイ!!」


名前を呼ぶ先生の低い声。

名簿を持つ腕。

一人一人の名前を

心を込めて

呼ぶんだ。



私は、精一杯大きな返事をする。



卒業証書を受け取る私の胸に

先生との思い出・・

先生への愛が溢れる。




先生を好きになって良かった。

先生と出逢えて良かった。

先生と恋して・・良かった。



蛍の光を歌いながら・・

涙が止まらなくなった。


左前にいる先生の歌声が

ハッキリと耳に届く・・・



先生の声だけが聞こえる。



先生・・・


先生・・・



もう 廊下を歩く先生を見ることもないんだね。


先生の授業を受けることも、

先生の姿を探すことも、

先生の声で授業に集中できなかったり・・・



もうないんだね。


そんなことも・・・




目に涙をためて、歌う先生の姿・・・


一生忘れない。



ここで過ごした日々を忘れない―





目が合う・・・


歌いながら・・・

目と目が合う。


涙が溢れて・・歌えなくなるよ・・先生。

先生は涙がこぼれないように

天井を見上げた。