「ずっと待ってたのに・・・あの日・・・何度も振り向いたのに・・」

「ごめん・・本当にごめん・・・傷つけてごめん・・」

「ううん・・・私のお父さんでいてくれてありがとう・・」

「ずっと・・・会いたかったよ・・毎年誕生日に依ちゃんにプレゼントを買っていた。雨が降るたびに・・・あの日のことを思い出してた・・」


ポケットからハンカチを出した男性が

依子の髪を拭いていた。


「幸せか?今・・」

「うん・・・お父さんは?」

「幸せだけど、依ちゃんのことがずっと気になってた。こんなに大きくなっていたとは・・・」


「私、裏切られたと思ってたけど・・・顔見たら、全部許しちゃった・・」


依子の笑顔は無邪気な子供のようだった。


「お父さん・・・元気でね・・・もう行った方がいいよ!」

「ああ・・元気でな!またいつか神様が会わせてくれるだろ・・」


大きく頷いた依子が鞄の中から何かを出した。

布のようなもの・・


「ほら・・これまた会えるお守りなんだ・・!!」


広げた布は

男性用のトランクス・・


「あ!!!!そんなの持ち歩いてたのか??参ったな・・実は・・・あの雨の日の参観・・・こっそり見に行ったんだ。依ちゃんの歌うおとうさんへの歌をちゃんと聞いたから・・」


「嘘・・・・!!!」


依子は、その場に泣き崩れ、何度もありがとうって叫んだ。




そして・・2人は手を大きく振りながら


何度も何度も振り返りながら


少しずつ離れていった。