『カツカツ』と侍女靴の音がする

『トゥーウーン』
『トゥーウーン』

花盛りの中庭を飛ぶ
花鳥に密を
吸わせていたマイケルは、
その指を そっと拭った。

「・・・・」

マジ、
こうしてないと
退屈で
仕方がなかったぐらい、
待たされたって!

そうだ、この花鳥遊びを教えて
くれたのも『ルーク』だ。

「選儀の方、こちらに。」

!!

侍女の声が
マイケルに届いて、案内される。

大広間や、広間があるのは
城の表。
次の 選儀があるのなら、
城の政治を仕切る
中奥だと
マイケルが考えていた。
のに。

「こちらの渡殿をお進み下さい」

え?! 奥に続く鈴回廊?!

「 もし?わたくし、こちらへ
入って大丈夫なのでしょうか」

思わず案内の侍女さんに、
聞いちゃったよ。

「はい。こちらへと伺ってます」

難なく返事されて、
侍女に
後宮の1つの部屋に通されて
しまったわけだけど、、

「あ!そっか!まだ後宮が機能
してないのか!あせったー。」

前は『女官』試験だったから、
中奥だったのかな?
いやー、さすがに
わたしも
後宮である『奥』には入った
事ないんだよね。

とわいえ、そんなわたしでも
しっかり知ってる!

「 本当なら、鈴回廊で侍女から、
女中に引き渡されるんだよね。」

まだ
後宮選儀の最中で、
女中もいないんだ!
それはいわゆる、
今までなかった
後宮を
1から作る段階!

それにしても、、
ここって、王将軍の『お手付き』
もあり得るって
側女の部屋じゃない?
ちがうか?、

それに、、

『ルーク』だって、
わたしが『女官』を受けるって
知ってるんだった。

タヌーのお店に顔を出した
『ルーク』に、
そう、話たんだもん。
それで、
『女官』に受かったら、
身の回りにヤオを『側仕え』
としてお城に呼んだらいい
って教えてくれたんだよね。

「なーにが、姉さんが城で
働いているから知ってるだよ!」

あー、まんまとやられた
って思ったんだよ。
あのさっきの瞬間に!


『コンコン』

マイケルが
考え悶えていると
戸を叩かれ返事の前に開けられた

「選儀のマイケルよな。こちへ」

なんと無く嫌な予感がして、
みたら、
『お局』さまが!

いわゆる、
王将軍の元乳母!
あ、きっと近達グランのママ!
顔似てるし、初めて見たー。

「よろしくお願い致します。」

マイケルはカーテシーで
礼をとりつつ、
『局』に続く。

「奥広間にて、候補女皆様に
お話がございます。先にお話
しておきます。選儀のマイケル
は、側女より下での後宮入りは
ありませぬ。お心つもりを。」

進行方向を見たまま、局に
マイケルはそう宣言された。

「畏まりました。」

とだけ応える。

え、これって『ルーク』の
計らい、、とか?

結局、城下にお忍びしてた
王将軍に会ってたって事だよね?
『ルーク』も人が悪いよ。

あれ、魔法で髪と瞳の色
変えてたんだ。
何が、オレも元巡礼者だよ!

でも、
『後宮』入りなら『側女』として
ヤオを、お小姓に、
呼ぶことになるかー。とか?

なーんてね。
本当は、ヤオを呼ぶ事さえ
もうない。また、ズルを
するからだ。いや、
もうズルでさえない。

「めざすは、地下のみ。」

「何か?」

「いえ、何も ございません。」

しまった。声に出てた。

「 こちらが奥広間。他の候補女様
方もすぐに参ります。では。」

局は、怪訝そうにも
そそくさと又案内に出ていく。

どうやら、
マイケルのいた部屋は、
奥広間に1番近い部屋だったか、
もしくは、末席扱いか、

広間には最初に
案内された模様。

「女中がまだ、いないからねー」

大変だー。とマイケルは、
広間が埋まるのを
大人しく待つ事にする。

奥広間の開け放たれた
窓には、後宮らしい花園が
新しく造園されている。

その花々をみてマイケルは、

「なあんだ。ここの花だった。」

窓から覗いて呟いた。

いつも『ルーク』は花を持って
きて、一緒に仕事をする
ナジールが キザだとか、
揶揄ってたっけ?

どの花も、1本だけ。
でも、
いつも珍しい花で。

「どうりで、探しても無いはず」

後宮の花だったんだ。

初めて『ルーク』にあったのは
海辺にあるラジのギルドで、
仲間付き合いは長い。

元巡礼者の冒険者。
それが わたしの知ってる
『ルーク』で、好きだったと
思う。


『カツーン、カツーン』
『カツーン、カツーン』
徐々に優雅な靴音が
次々と響くと
見えてくる 雅な団体。


『局』さまに、引き連れられ
候補女が奥広間に姿を見せた。

けど、
そうそうたる
面々なんですけどー!!

まずは、面を下げて下げて
カーテシー。
大公令嬢を先頭に、公爵令嬢、
辺境伯令嬢、侯爵令嬢達。

「しかも、都と藩島ともに!」

そうだよ藩島令嬢だけでなく、
王領都の令嬢も。
あれだ!控えいひかーえーいー!

当然侯爵令嬢以下の方々も
来ると
思ったんだけど、、


「 奥広間に、ようこそあられた。
クプィ・ ロィグ・ヘーデイで
ございます。『奥局』とお呼び
下さいませ。して、こたびの
後宮選儀はこれより 実技になり
ます故、その前にお話致し、」


きっと近達グランママの奥局の
声で、
マイケルも面を上げ、
他の令嬢の最後方にて、

奥局の説明を聞けば、
この一団が 妃候補になると
マイケルにも理解できた。

「 本来ならば、王帝のみ許される
後宮がこの度作られますは、、」

魔法力を保管し、
応用できる

魔充石。

ウーリューウ藩島でしか採れない
水龍の骨だけが

魔充石となる。

それが判明した途端、
王領都は
それまで他国防波堤にしか役と
考えていなかった
藩島への懐柔を
試みてきたのが

この後宮の制定。

「 これより、舞・唄・書の技
を選儀し、妃位を決めて参り」

早速
王領都の令嬢を送り込んできた
その最たるが、
大公令嬢スゥカだった。

「 そして地下宮にて、藩島への
忠誠を表し、御祓をして頂き、」


そう、これ!
この為に『後宮』札を取ったん
だよね。

最初は、
知らなかったけど、
『後宮』への選儀には

御祓の礼

てのがあって
それを
地下宮の熱泉でやるの!

こんなに早く
地下宮に
辿り着く方法があったとは!!

「 その後には 閨の儀にて処女
証明と王将軍相性を行いますの」

で、お心つもりを?って?

何それ?
スパイ用心もあるだろうけど

何?『後宮』実技って、
そんな事もあるの?

せいぜい医官が調べるぐらい
いや、魔職人が視れるでしょ?

あ、令嬢が
同じ質問してる。
視れないの?ウソ?!

「 全員ではございません。三妃位
に選儀されました方のみに、」

そ、そか。、
そりゃそうだ どんだけ
絶倫だって話よ!
て。そーだ、その前に

地下宮で転移門を
見つけて、

わたしは消える。

「 選儀が間に、方々のお部屋や、
離宮をご用意できましょう。」

わざわざ、
犯罪者になって、

王将軍の前で、
首を落とすとか

しなくて良かったんだよ。

馬鹿だなあ、

側女どころでもないんだよね。
わたし。