「 テュルク様。地下獄卒宮にて、
収容しました異世界人について
ザード殿より、報告が
今 入りまして、ございます。」

宰相カハラが、
長く伸ばした黒羽根色の片前髪
から モノクルを光らせ
ウーリューウ藩島主
王将軍テュルクの執務室に
入ってくる。

「細かい数字を、表示してくれ」

銀月色の長い髪を垂らして
王将軍テュルクが
空中に通信表示を
開いた。

「 異世界人の性別、年齢は
そちらに。ハーバナの分解析
によりますと、魔因子の無い
世界人であります。詳細は、
ここにも。よって、マイケルと
同じ特質体と判明。加えて、
『ヒーラー』が男女1名ずつ、
高年齢ではありますが確認と」

表示画面を
モノクルに映し
宰相カハラは、即座に続ける。

窓の外は黄昏時。
夜の帳を、前に段々と
カクテルピンクに色を変えて、

夜を知らせ始める。


「 言語疎通も可能になりました。
異世界人の島は『オキノハマ』
と呼ばれる貿易島だった
そうでございます。
極めて我が藩島と似た性質と
思われますが、面白い職人も
何人かございました。
我等で言いますところの、
築城師。『ドゥンシメェオン』
なる人物に侍従する者が
混じっています。船にも長けて
た民族のようでもありますね」

興味深そうな色を浮かべて
宰相カハラは侍従が持つ
トレーの品を
テュルクに差し出し、

このような箱に
ゴールドの神を入れて、持ち
歩いているようです。
と、コトンと
大理石の机に置いた。

「 ゴールド、、島では珍しい。
築城師がいるのか?面白いな」

テュルクの机に
置かれた箱は手の内にスッポリ
入るほどに小さく
観音開きの中には、
ゴールドには像があった。

「 それが、実に戦闘に特化した
城なども作っていたようで、
ハーバナが言うには、発想を
すぐにでも、取り入れたい程
とか。魔法を、使わない世界
らしい思考力は、わたくしも
マイケルを思いだしました。」

そのカハラの言葉に、
テュルクは
特に何も気配を変えない。

「 異世界人はこれより、
『オキノハマ』を呼称とする。
彼等は、捕虜では無き事を、
藩島中はもとより、彼等自身
も自覚すべきよう、極力自由に
地下では過ごさせるとする。
但し今時は、地下のみの行動
範囲としろ!よいなカハラ。」

カハラはテュルクの無反応に
モノクルを片手で
上げて、静かに

御意と指を舞わす。

各部所へ通達する
カハラを横目に、
テュルクは少し俯いてから
頭を、上げた。

「それ以上に問題は、この状況」

言い放つと、
窓を開けてテラスに出のだ。

その
虚空には、先程 異世界人を
地下に収容した、志願者達が

縦横無尽に飛行を
している。

「テュルク様、これはもう。」

カハラが思わず呟いた。

誰もが、
空中を泳ぐ

水龍の群れを追っているのだ。

「カオスですよ!」

見れば城下の民も
水龍を捕縛出来ないかと、
シェルターから出て
来ているのだ。

「 どうも、普通に捕縛出来ない
ようだな。志願の能力者では
不可能なのか、魔導師ならば
可能か、
そして『術』の影響を受
けるかを確かめよ。それと、」

テュルクは、それよりと、
さらに抉られた
地表を指さす。

「 我も初めて、地空結界の陣を
目にしたが、此の様に明らかに
陣が綻んでおるが、どうだ?」

テュルクの指示に世話しなく
指を舞わすカハラが

「ザード殿が、ハーバナと陣の
再構築をこれより思案と。
他の魔導師と、職人が水龍の
解析にこれより出ます。あ!」

通信表示も同時に確認している
カハラが突然、声を上げた。

テュルクが銀月の髪を
かき揚げ、カハラを見ると、
説明もなく、即座に片手を
前に突き出す。

その手に銀の弓矢が出現した!

カハラが
全藩島通信回線をオープンに
して通達して。

『 現在、水龍捕獲にシェルター
から出ている民と、志願民に
告ぐ。直ちにシェルターと城へ
避難を!他国より、『術』が
放たれた。藩島結界の
完全起動まで、王将軍による
守護結界を張る!避難を!!』

そう言い切ると同時に
ひきしぼっていた、
テュルクが銀の弓を引いた。

虚空に放たれた矢は、
高く放物線を描くと、
藩島の上空に
銀にドームを作る。

その様子を見た藩島民は、
散り散りに消えていた。。

「 テュルク様も中へ!!
今となっては地下獄卒宮が
1番安全となります!
皮肉ですが、、、
貴人牢宮に、お入り下さい。
直ちに、用意を致します。」

侍従が窓を閉めたと同時に、
窓から見える空に

『ベショッ!ベショベショ!!』

汚泥が張り付いた。


テュルクが
守護の矢で張ったドームに
次々と汚泥が張り付き、

少しずつ動いていく。
それは悍ましい生物ように
見える。


「 やはり、、来たか。
地空結界の穴を見つけて入って
来るとは、予想していたが。 」

此の数は1国の『術』ではない。

テュルクの読みにカハラが
応えた。

「 周辺国で挙党を組んだかと。
結界に綻びあろうと、物理的に
侵略を防ぐ機能は稼働しており
ます。ただ、『術』で内側から
アタックされれば、
今の結界では破れるでしょう。」

夜か。

テュルクが目を細めて
思考を纏める。

そして、ゆっくりとカハラに
告げた。

「 翼龍隊長ドゥワネイに、1人
身体強化させた『オキノハマ』
を同行させて飛ばせ。
王領都に通達だ。戦闘準備を」