ギルドの長ラジの息子ヤケラは
こんなにも高く翔んだ事はないと
思いながら、副長レサの後を
懸命に追って来た。

『ガゴラーーーン..ガゴラーーーン..ゴガラーーーンガラーー...』


横から、ヤケラを追い越し、
跳躍する男闘呼達もいてたが、
レサの背中を1番に目指して
体に否応なしにかかる
重力を なんとか往なし

島の地下径が粒子に落ちる礫にも
耐え続け、

虚空に浮かぶ 影牢のような
島の上空に

「出た!!レサおじ、これ?!」

ヤケラはレサの隣に並んだ。


上空には、雲霞の如く 浮遊する
男闘呼達の影が見える。

そして
異世界の島は、平たく、
ゆっくりと
少し斜めに
沈んで
行くように

見えた。


「ヤケラぁ、団体行動、おぼえと
けぇ。ギルドじゃあ、せいぜい
チームだかんなぁ。通信だぞ。」

レサに促され、ヤケラも通信回路
の表示を出す。
島の座標の上に、無数の点と、
ヤケラを示す点滅があった。

『我は、翼龍隊長ドゥワネイだ。
志願者達よ、桃色発光の魔充石
を吸収せよ。遠視能力が開いた
なら、異世界人の座標を各々で
合わせ自発的に救助願う。
開始は、追って合図する。注意
事項だ、龍は飢餓状態にする。
くれぐれも、喰われるな。以上』

表示を消して

「遠視の石だよな。」と、

ヤケラはレサが
するように、腰の道具入れから
魔充石を取り出し吸収する
と、レサに聞いた。

「龍を飢餓にするって、どう
いう事なんだ?レサおじ。」

レサが、とうとう来たなと
呟いて

「遠視能力でぇ、 島に着いた翼龍
の奴らを見てみな。あんまり、
気分いいもんじゃあないがな。」

ヤケラに、顎しゃくって島を
見せる。
ヤケラは、レサの言うとおり遠視を開いて、島に着いた翼龍達に
焦点をあてて見た。

「レサおじ!翼龍の色が、赤褐色
に変わった。あんな色初めてだ」

レサはそんなヤケラを見つめて、

「あの色はな、翼龍から魔力を
抜いて飢餓させた色だぁ。龍使い
の隊員が、龍の魔力を抜くんだ。
これから起きることたぁ、
目ぇひんむいて見ろよ、ヤケラ」

瞳さえ真っ赤にした翼龍達は、
龍隊員を乗せたまま、一気に
それぞれに突進していく。
その先に居たのは、
島にいる、水牛?らしい。

「あぁあっ、、レサおじ、、」

思わずヤケラは叫んだ。

突進していく翼龍が、
いきなり見たことのない大きさに
口を開いて、
水牛を丸飲みしたのだ!

次々と翼龍達は、水牛の群れを
丸飲み込んでいく。

珠に、飲みきれなかった水牛が、
足だけ残していたりするが、
直ぐに別の翼龍が
口を開けて飲んで消した。

「ヤケラは、国の戦闘にまだ出た
事がぁねぇもんな。初めて魔獣の
性を見たろ?まだなぁ、この島は
魔力の無い生き物だから、無抵抗
で、キレイに飲まれてくれるぁ」

水牛のみならず、あらゆる
島の生き物を、翼龍はたかって
丸飲みしていく。

或はずのない
匂いがしそうな光景だった。

「魔獣同士で戦闘になりゃ、
そうも いかねぇから、壮絶だ。
ヤケラ、よく見とけよ。」

口から、動物の足をはみ出させて
ガツガツと根こそぎ蹂躙する。

そんな 性を全快に放出する
翼龍の群れに、
ヤケラは胃が震えて
気分が悪くなり
嘔吐した。

それでも、
血は、驚く程流れていない。
なのに、
それは余り不自然な捕食風景で。

返って残酷に感じる。

「レサおじ、、人を間違って
食べたりしないのか?あいつら」

唾を吐きながらヤケラは
青くなって、
乞うように、レサを見た。

「ならねぇように、隊員がいる。
だから、注意喚起もあったろ?
間違って喰われたら、ぜーんぶ
『おじゃん』だ。もう、結界
どころじゃなくなる。いいな?」

理屈はわからない。
ただ、
人は丸飲み出来ないらしいから、
喰われると血が飛ぶのだろう。
それは
結界を汚してしまうとなると、
ヤケラも、感じた。

それでも。


『ーン ゴガラーーー..ンカゴ゙ラ
ン...ガ ラーー ーン ..ゴ.. 』

黙るヤケラに、

「魔法が使えりゃ、一発で
移動させれるんだがなあ。」

なんとも、原始的だよと、
レサは苦い顔をした。
そして
そろそろ合図があるぞと、
ヤケラに促す。

みるみる、翼龍達の色が元の色へ戻っていくのだ。

ヤケラには それが
同時に、生き物達が
圧倒的な龍達に駆逐されたと
イヤでも分かって、
背筋が寒い。


「なあ、レサおじ。動物だから、
否応なしに捨て喰われさ、
人なら 異世界人でも 助ける
なんて、なんだか ぐちゃぐちゃ
だよ、オレ。ロミにも言えない」

それに、目の前で 龍が家畜を
食べてくのを見て、異世界人は
どんな気分なんだよ。と、
気がつけば
ヤケラの目が、訳も解らず逃げる
異世界の民を見つけた。

「十中八九、俺らに怯えて、敵
だと思うな。そーゆーわけだ。
ほれ、合図だ。あんの修羅場に
降りるぞ、ヤケラ!腹、くくれ」

お前は、ガキを拾え!いいな!

レサが叫んだ時、
巨大な、照明魔充石が上がった。


「ヤケラ!龍達もここで喰って
魔力を貯める!無血なのも絶対。
何よりなぁ、戦闘じゃねぇ。
今はぁそれに、感謝しろ!!」

レサが道具入れから、
魔用品の紐を出して、肩に
引っ掛ける。
願えば、勝手に捕獲して
自分達の体に
異世界人を括りつけるだろう。

自分の父親ラジも、レサも
解っていてヤケラを ここへ
送ったのだ。

「今から、スゴく悪者になる
気分だよ。レサおじ!」

ヤケラが投げやりに綱を
襷にかける。

何が正解かは、わからないけど。

「奇遇だなぁ、俺もだぜぇ。」

城を出た時とは気分がちがうだろ?と
レサはヤケラに、目を指すポーズをする。

『ーン カアラーーー ..ンカアラ
ン...カア ラーー ーン .... 』

役目を やらなければ、
自分達も ロミも、藩島も
どうなる?

ヤケラは、遠視を開いて狙いを
定めた。