片やテュルク。
当てられた刃を押しやって尚
この女は、己が腕枷から逃げるつもりなのか?そうは させるか!と、
刃を持つ利き腕に力を
入れる。同時に、
「ごめんな、さ、い。」

テュルクの腕枷の中から
マイケルの吐息が彼の耳を撫で、
マイケルの瞳に一瞬の光が宿った。
とたん、

テュルクが感じていた己が手の反発
が解けてテュルクの白い刃の
切っ先から血の飛沫が飛んだ。

好きかもしれない人の
刃に薙ぎ斬られたこの稀有な感じ。
深淵に落ちる刹那、
このまま銀月の髪を持つ王将軍に
斬首の介添えまでされるのだろうか
マイケルは目を見開いて何かを
叫ぶテュルクの様子を眺めて、
暗い処へ意識を落とした。