マイケルは、暗闇の中で聞いた。


ー『ガラーーーンガラーーーンガラ

**.***.キーンン
恋に迷い
食み迷うが生、故に
人生の瞼は
閉じられたままが城か

ーーーンガラーーーンガラーーー
**.***.カーンン


真実に悟れ。
空も海もなく
どこに世界の差異あるか

ンガラーーーンガラーーーン ..
**.***.コーンーン
**.***. …

世界は 空 で
次元宇宙は限りなく自由で
全ては 空 なのであり。
そこに愛はあるか。



マイケルは、
金剛杖を持って
スポーツインナーのまま
白い空間で、目をさました。
まだ、体は濡れている。

そこに、よく知る漆黒色の瞳が
ヒョコッと 白の景色に
差し込まれた。

「マイケルさま、、死んだの
では なかった、のですね?」

昼の白い空を仰ぐみたいに
白の空間に横たわる
マイケルの体は
ヒンヤリとした大理石の床に
触れていた。

「生きておられたのですか?」

覆い被さるのは、
変わらずクリンクリンに
伸びた、牧場色した巻き毛の
すっかり女っ子ーな顔の、

やっぱり、ヤオだー。
おねいさんになっちゃってー。

斬首する前、最後に見た
ヤオのローブ姿に
マイケルは、ほっと息をついた。

どうやら『魔法陣』の中は
どこかに繋がっていた
みたいだ。

「死んだよ。」

そう応答して
マイケルは、ヤオのすっと伸びた
鼻に薄く残る そばかすを、
3本の指で撫でた。

「体がないのですか?」

ヤオは、不安げな顔を
見せて、マイケルの手を引く。

「ありがとうね。」

マイケルは、
ヤオの、すべっとした手を
しっかり握って
上半身を起こすと、
向き合う形になって、
ヤオを、
優しく抱き締めた。

「やはり、斬首されたので、
しょうか、、なんて言えません」

ヤオは、涙を浮かべていた。

マイケルは、
もうすぐ大人の仲間入りを
するべく、花の薫りを纏う
ヤオの
頭を、抱き締めながら撫でて、

「怖かったとは、思うよ。
痛くって、辛くって
いっぱい血が吹き出てね。
息が出来なくて。
でも、それだけの痛みじゃ
なかった気がするんだよね。」

静かに告げた。

「体がないのに、マイケルさま
暖ったかいですね。不思議です」

とんちんかんに言って
ヤオは、 少し笑った。

さっきまで水中を泳いでいた
マイケルも まだ意識が
定まらない。

「ヤオは、何してるの。
ここって、何処なんだろ、、」

漸く焦点を合わせて、ゆっくり
見回せば 白いだけの空間に、
海神ワーフ・エリベス像が
虹色鉱石で彫られて 立っている。

海の神殿でみたように、
円形の空間には
壁一面に
虹色の アンモナイトっぽいのが
埋め込まれ?いた。
どこかでみたような光景だとも
マイケルは思う。

「ここ何処?」

ああ、元の世界で似た所がある。
とか、考えながら
もう1度ヤオにマイケルが聞く。

「わかりません。
結界のある場所としか、」

マイケルにも解る事は、
せいぜい海の神殿にあった
逆さまのワーフ・エリベス像と
この空間のワーフ・エリベス像が
天地対になって、
この円形の空間の半円ずつを
分かち合ってるであろう事。

そして、今

記憶の『走査』と、調整世界の
今時間が、クロスしている事を。

「ヤオは、どうしてここに?」

マイケルと、ヤオは隣同士
並んで床に座っている。

「マイケルさま。今、
ウーリューウ藩島は、消滅の危機
を迎えてるんです。ご存知ない
かと思いますが、マイケルさま
が、その、斬首されてから。」

え?!そうなの?!ショック!!
もしかして、わたしのせい?

「・・・・」

顔を青くしたマイケルを
気にしながらも、ヤオは続けた。

「藩島が瓦解する恐れがあるとか
で、魔導師がワーフ・エリベス
像の路から魔力注入して、
地空結界を強化することに。
それで、ヤオは ここに、
魔力路を通って、結界の中に
入ったんです。それが、、」

ここでした。

ヤオの長い睫毛が、パチパチした

「そっか。じゃあ、あたしが
これまでやってきた事が、役に
立ったんだね。良かったよ。」

そーゆーことかー。
ヤオも、体は外側において、
思念体で、ワーフ・エリベス像の
結界に入ってるわけね。
なるほど。
なかなか、大師は、やることが
憎いわー。

「ハイ!マイケルさまが、
分散して魔導師が、魔力を
注入出来る様に、魔充石も、
用意されてきましたもんね!」

ヤオが、パッと顔を輝かせた。
マイケルとヤオの間に、
これまでの事が 思い出される。

「じゃあ、ヤオはここで、
藩島から集まる魔力を まとめて
魔法陣に注入する役目だ。」

そうだ、
ウーリューウ藩島中の
海神ワーフ・エリベス像を通じて
送られる魔力がここに集まるって
ことか!!

「そうなんですけど。」

「うん?」

もうこの円形の空間には、
充分ヤオの魔力が満たされている
って感じる。

「実は、さっき通信回線で、
ザード様が、『次元津波』とか
いうのが、くるとか緊急宣言を
されて、、大変みたいなんです」

そう言って、ヤオがマイケルに、
状況待ちだと教えてくれる。

そして、

通信回線の表示を空中に
光らせて、
マイケルに見せたのは

自分の首に
刃を当てた、張本人。

王将軍テュルクの出陣を
鼓舞する映像だった。


ー『ガラーーーンガラーーーンガラ**.***.キーンン

『藩島の民達よ、我は
ウーリューウ藩島が主、王将
テュルク・ラゥ・カフカス。
次元津波という、
未曾有の災害が襲わんとする
今!
海神ワーフ・エリベス像に、
魔力を注ぎ、藩島規模の地空結界
を行なわねばならぬ!
しかし!!
其を阻むが、天空から墜ちる
異世界の一部土地である。

**.***
ーーーンガラーーーンガラーーー
**.***.カーンン

飛行能力ある志願者は、
地空結界を展開するが為、
異世界人を全員漏れる事なく
救出せよ!!
力の限り跳べ!
結界を行使 出来るかは、
そなた達双肩にかかっている!
明日を迎えるが為に、
必ず成さん!!跳べ!勇者達!』

ンガラーーーンガラーーーン ..
**.***.コーンーン
**.***. …