よし!!サイコーにツイてる!

『マイケル・楊』
って言っても
もう何年も『マイケル』か、
『マイーケ・ルゥ・ヤァングア』
なんだけど?
まあいいかな。
とにかくわたし、マイケルは
絶好調に、
海洋民族出身→モケ由来の(笑)
魔力と、ご機嫌にシンクロ、
出来ているわけで。

只今絶賛、ウーリューウ藩島の
海中都市遺構を潜り中!!です!

まだ午後。

白い日が高いうち
さらに潮が、引いた海の沖に、、

モケの魔力を付加した
マイケルを先頭として、
ギルド長のラジと、
追加で天幕に
寄越された
潜水能力が高い、
身体強化付加された
ハンター達が
黒い一団となって
続けざまに
真っ青な
海へと
潜る。

目指すは、
神話の時代から
海中に立つ
海神ワーフ・エリザベス像。

この像の袂は、
海中都市遺構の中でも
トレジャーハンター達から
神殿と呼ばれる
海域。

石造りの像が
装飾された
アーチや、
柱、モザイクのタイル
虹色に光る
鉱石で
造られて、

水の中で揺れる神殿は、
幻想的な景色を見せる迷宮だ。

「相変わらず、すごいわ、」

もちろん、海の中じゃ、
しゃべれないけど、
とにかく、この辺りは本当に
沈む都市の中でもダントツ、
豪華。

それこそ、
フロリダのリゾートにある
海底墓地とか、
メキシコの海底美術館を
あわせたような、
巨大な神殿遺構になってて、

ゴロゴロある
芸術的な石像なんかを、いつもは
みんな、ハントしていく。

それこそ、最初の時は
水龍の骨に魔力を保管出来ると
解ると、今度はこぞって
水龍の骨をハントしていた。

けれど
今は、
マイケルは
ひたすら
目指す場所に
潜る。

長居は厳禁!!
今日は最っと、そう!神殿の奥に
泳ぐんだから。

『ブクブク、ブクブクブクブク』

マイケルは、
ラジに合図を送ってさらに、
奥にと泳いでいく。

天幕でのラジとのやり取りで、
先払いに、装飾品分のウーリーを
もぎ取り、ヤオに渡して
マイケルは、
石2つ分のウーリで
望む能力を手に入れた。

そして、
早速ヤオをラジ達の
天幕に預けて、
今1番の獲物を
採りに
ラジ達を、
さらに
奥へと
先導
する。

途中から海上の光が届かない
トンネル回廊になるのだ。
それこそ
この先は暫く、
真っ黒な闇になる。

『ブク!ブク。ブクブクブク!』

ラジに、打ち合わせていた、
綱を伸ばして渡すと、
マイケルは驚いた。

『?!ブク!!』

ラジの指が、大きく光りだす。
灯明魔法をラジが編んだのだ。

「どんだけ、魔力あるのよ、」

只でさえ長時間の潜水。
本来は持久走並みに
潜水能力を行使し続ける。

その上で、魔法師でもないのに
魔法を編むラジに、
マイケルは
水中で遠い目をした。
改めて、元英雄の
底知れなさを感じるしかない。

『ブク!!ブクブク、、、』

それでも有難い
ラジの灯明を明かりを頼りに、
闇のトンネル回廊を
お互いに伸ばした綱を持ちつつ
マイケル達一団は
さらにさらに、泳ぐ。


「何がツイてたかといえば、」

モケの潜水魔力を
交渉したら、
すぐにOKだった事だろう。

マイケルは改めて、天幕での
やり取りを思い出す。

マイケルの要望を聞いたラジは、
ふたつ返事で飲んだのだ。


あれは、意外だったなあ。
多少の付加なら別だけど、
1日分のモケの魔力だもんね。
その上、わたしは
魔力なし。だよ?

要するに 空っぽの器なのよ。
付加を出来るだけ、したら、
もう、
モケは、ヘロヘロになって、
明日の夕方まで使い物に
ならなくなった。

ゴメンね、モケ!

後ろを振り向くと、モケの次に、
潜水能力が高いマサバが
機嫌悪そうにして、見える。

ハイハイ、スルーね。

マサバが拗ねるのも無理ないよ。
モケの相棒なんだし。

でも、
わたしの理由を聞たら、
長であるラジ自ら、
潜水ハントのリーダーとして
モケの代わりに、
潜るって言って
漸くマサバも、
納得してくれたわけ。

とにかくね
モケに激熱リスペクトなんだわ
マサバは!!

でもわかるよ。モケの潜水能力!
だって、すごい!!
今、超実感しちゃってるって!

最初の時、
この闇のトンネル回廊を抜けて
神殿の深部に潜れたのは、

魔充石になる水龍の骨を見つけて
それからまだ、
1年経ってからだった。

あの時なんか、
ヤオの遠視の力で、
水龍の骨を探してさ。

すっごい潜水用の魔充石を
使って、灯明魔法も魔充石に
仕込んで、ここに来たんだよ!?

本当に今思い出しても、
泣ける毎日でさ!

だって、令嬢だったわたしがよ!

この世界で
何にも 持ってないって?!

毎日、日銭を海で稼いで、
魚採って食料にして、

ギルドで巡礼者を受け入れして
くれるから、まだ寝る処は
あったのが救いだよ。
でも、それも最初だけ!

恋愛もしてないのに!
半分自分の子供みたいに、
ヤオを食べさせて!!
必死だったよ、本当!

そりゃね、元の世界でも
わたしの国は大陸で広いから、
それこそ貧困もある。
紛争もある!

それでね、
わたしね、わかったのよ!

『恋愛』ってね、生活が なんとか
出来て
出来る ものなんだって!!

『ブク!!ゴブクーッ!ブク!』

マイケルの口から、
一瞬気泡が派手に 昇ると、
ラジが 怪訝な顔を してきた。

ごめん、なんでもないから。

『ブクブク?』
『ブクブク!ブクブク!』


そうして
今まで、ただ闇が有るだけの
水中に、
ラジの灯明が、
両側に回廊が別れる様子を
照らし出した。

マイケルはラジに右へ曲がる事
を合図する。
ラジは頷いて、
後ろのマサバ達にも
右を指示した。

暗黒といえる程の闇。
それでもマイケルに迷いは無く、
恐れが少ないのは
この海中都市遺構の海は
海獣が居ないこともある。

そして、生きている水龍の姿も
マイケルは
まだ見た事がない。
外洋には、海龍をはじめとする
巨大な海獣も多いと聞いたのに。


「その訳は、本当かどうか、
わかんないけど、島の結界の
お陰だってみんな言うんだよね」

そろそろ、と
マイケルが感じた時。
目の前に光が見えてきた。

目的の場所だ。

マイケルは、紐を引っ張って、
ラジを見る。
ラジも、光に気が付ていた。

闇のトンネル回廊が
終わった先。
そこに明けた円形の空間に
ラジは驚いている。

水中神殿の 祈りの場なのだろう。
部屋には
虹色鉱石で造られた
海神ワーフ・エリベス像が
祈りの場の天井に、
逆さに付けられているのが、
謎めいている。

どいう構造になっているのか、
この天井も虹色鉱石だからか、
まるで外の光がこの海底にまで
伸びているような明るさ。

春の光のような
明るい水に満たされ穏やかな
場所と、似つかわしくない

夥しい 水龍の亡骸。

まだ上位の水龍には、鱗さえも
残っているのに、
下積みされているのは
既に白骨化しているが、

その底が見えない程に
骸の数々。

太古からの 水龍の 墓場か。

『ブクブク、、、ブクブク、、』

「この、水龍って、どういう、
生き物なんだろう、、ね?」

最初にこの祈り場を見つけた時、
その後、1度目にラジ達と来た時

そして、またここに来て、
マイケルは同じ思いになった。

ラジの後に 着いてきたマサバ達も
仰天しているのが、
見て取れる。

圧巻にして、神聖。
そして、畏怖する。

『、、ブク、、ブク、、』

とにかく、
この早い段階でラジ達を
ここへ連れて来たのは、一重に
魔充石を一気に造る為。

一斉に、身体強化の魔法を編んで
マサバ達が、巨大な網を
広げていく。

そう、まるで底引き網の様に
墓場に積もる水龍の骨を、
掬って纏めて帰る戦法。

とわいえ、
魔充石を練り込んだ
魔用品なんかこれからで、
ごく普通の網ゆえ、
引っ掻けて穴を開けないよう、
ラジが 細かく指示を合図
し始める。


きっかけはね、
水龍の喉仏の骨だったけど、
結局試したら、水龍の骨なら
ぜーんぶ、
魔充石に進化したんだよね。

これだけあれば、
どれだけ魔充石が造れるだろう?

そして、どれだけこの
世界の歴史を
変えちゃったんだろ?

そんな事を考えると、
水中で、背中が空寒くなる。

だから、
戯れに
逆さまのワーフ・エリベス像に
近く。


「!!!」

マイケルは
その足元の天井に
魔法陣が
在る事に気が付いて。

恐る恐る
手を触れてみる。

思った通り、

『グン』

マイケルの体が すり抜けた。

忘れてた!!
だって、今 思念体だもん!!
大師ー!!

「あれだ、◯◯抜けフープ!」

だ!

知らないけど。