『ガラーーーンガラーーーンガラ』

「モケ!!モケ!ラジ長は
ギルドん広場のエリベス像で、
出庭ったまんまなんだよぅ!
なんとか動いてもらわにゃあ」

死んじまうよぉ、、
マサバが情けない声で、
モケにラジの説得を懇願する。

『ガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーー』


そんなマサバに、
モケは自分も吼えるしかない。

「黙れ!マサバ!ラジ長は平気
に決まってらぁ!あの人はなあ
英雄なんだよ!『次元津波』
だって打たれたこたぁ、ある
怪物だ!オレらなんか足手纏い
なんだよ!さっさと 村ん奴ら
シェルターに入れやがれ!!」

『ンガラーーーンガラーーーンガラーーーン ..』

海洋民族の血が流れるモケは、
泳ぎの身体能力は、魔力がなくて
も驚く程高いが今は意味がない

「クソ!魔法師でもねぇし、
飛行能力もねぇ、身体強化の
能力もねぇんじゃ、オレ達ぁ、
精々 島民ん、誘導しかねぇぞ」

『ーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーン 』
モケは、投げやりに
村へ走ったマサバの背中に
言い放ち、
自分の片手をブンブン回して
ギルド周りの住人を、
ギルドが持つシェルターに
追いたてる。

『ガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーンガラーーーン ..』

今は、
魔充石も海神ワーフ・エリベス像
から魔力注入する為
全ての魔充石が、
魔法師に配分されれば
モケの手元にあるはずは 無く、
弔い鐘が鳴るが間は、
魔法を編む事が、出来ないのだ。

「悔しいーのぉー!!!!!」

モケの自責の声が鐘と重なる。


『ガラーーーンガラーーーンガラ
『急げ、、もう後に、、
ーーーンガラーーーンガラーーー
『キャーー、、、待って、、

ンガラーーーンガラーーーン .』

海辺の混乱と同じく、城下町も
避難住民や城に参集する冒険者、
誘導に行き交う兵士で
蜂の巣をツツく、大混乱になる。
『飛行能力は者、、門、、へ

『オイ、これは、、使えるか、

『ガラーーーンガラーーーン
ンガラーーーンガラーーーン、』

「ハイハイ、押さないでください
ましよ!どんどん お出し
しますんで、焦らないで!」

城下商人タヌーの店先は、
飛行能力持ちの冒険者を始め、
身体強化出来る、島民が
どんどん 押し寄せていた。

『オヤジ!この紐持っていくぞ』

『こっちの強化網いいか?』

『衝撃避けのローブをくれ!』

「とにかく、使えるなら持って
いってくれよ!お代はいい。
今日だけは、大盤振る舞いだ!」

明日がくるならりゃ、かまわん!
と、タヌーは紐と、網、ローブを
叩き出して 次々と渡しまくる。

「命あっての物種だからなぁ!」

タヌーは店の在庫棚から、
ありったけの物を手に抱えて
店先にぶちまけ、並べた!

「ナジール!お前も作業が
終わったら、すぐにシェルターに
入るんだ。工房の鍵も締めるの
忘れるなよ、中のもんが出たら、
何があるかわからんからな!」

分解構成の能力者、タヌーは
同じく其の力で、魔具を作る
息子のナジールに急いで
魔具工房を片付けさせていた。

「分かってるって、父さん!
父さんこそ、もう中に入れよ!
売るんじゃないなら、魔用品は
置いときゃ、持っていくだろ!」

城下町の目抜通り。
殆どの商店は幕を閉めて、商家で
持つシェルターか、
解放された城内に逃れている。

ウーリューウ藩島は、
カフカス王領国の外交島で、
それは、
海に向かって断崖絶壁で囲まれる
広大な大陸国に強固に
張り巡らされた
結界の玄関口という
国防の最前線を意味する。

「おや、殆ど通りの店は 品だけ
出して籠ったか。あとは、ウチ
だけとはな!じゃあ頃合いだろ」

商家の主、タヌーは
城下の目抜通りに積み出された
山を見て 息子に合図する。

食糧と魔用品は緊急時、
民や 城から『出立』する志願者
達が自由に
持っていけるよう、商人達が
何年か前に考案した
提供協定に基づくが、
それも

「なあ、父さん。こんな事、
爺さんの時代ぶりじゃないか?」

ナジールは、紺色の髪をかき揚げ
汗を拭った。工房の鍵締めも
終わらせて、いつまでも
品を出している
父タヌーを迎えにきたのだ。

「外からの戦闘は、爺さん達も
何回か経験しとるだろうがなぁ、
こんな一大事は、ないだろなぁ」

まさか、魔用品がこんなに
必要になるたぁと、
呟きながら、
分解の視力で空を見上げる。

「マイケルは、分かってたのか
なんて、思うよ。オレは。」

ナジールは、一見何の変哲もない
自分が施した紐を、手にする。
良く見ないと 魔充石が
練り込まれた紐とは 分からない。

「戦闘ばかりがなぁ、有事じゃ
ないんだとか、言ってたなぁ」

タヌーは、ナジールを
少し見て、その人物の名を
言葉にした。

魔具とは違い、魔用品は
使う魔充石の魔力が少量で済み、
使う魔法も必要ない。

ナジールみたいな
工房で職人が 魔法を施すだけで、
日用品の自由度が高くなり、
そのお陰で 魔用品も
島民の生活に普及してきた。

そんな魔用品を考案したのが
魔充石を見つけた、

魔力なしの マイケルだったのだ。


『ガラーーーンガラーーーンガラ
ーーーンガラーーーンガラーーー

ンガラーーーンガラーーーン

「ハーバナのやつぁ、大丈夫か。
今頃、城ん中で 泣きそうに
なっとるんじゃないかぁ。」

未だ鳴る鐘の音に、
自分の息子が 黙りこむのを、
タヌーが 思いやって出したのは
城中で職人に就く、
ナジールの幼馴染の男の事。

「それは、どいう、意味、だよ」

ナジールの表情のない声に、

タヌーは ため息をついて、

「すまんな。行こう。来る前に」

失言だと、後ろ手に合図をして、
先にシェルターに歩く。

ナジールは、タヌーの後ろに
付きながら空を視れば、
未だ全容は分からないが、

雲の向こうに、巨大な塊が
砂嵐のようどんどん沈んでくる
のが感じとれる。

とはいえ、ナジールの能力は
普通だ。
城付きで職人をする幼馴染、

ハーバナみたいに、もっと
能力が高ければと思った
時も正直、あって、
ハーバナを恨めしくも思った。

それでも、今は

「ハーバナ、負けるなよ、
仕事、やり切れ。祈ってる。」

同じ眼で、あの塊を視る
幼馴染に、心底ナジールは
エールを送る。

この鐘が鳴る 誰が為にもと。

『ガラーーーンガラー
ーーンガラ
ーーーンガラーー
ーンガラーーー 』