中学2年のある日、校長室に呼ばれた。
何事かと思い恐る恐るノックをして入ると海斗の姿が目に入る・・
その姿に安堵したが二人で呼び出される理由が解らず
もしかして一緒に登校するのは校則違反にあたるか・・
と短時間に逡巡する・・
そんな不安が顔に出ていたのか海斗は
ニコッと笑顔を見せてくれそれに心底安堵する。
「二人を呼び出したのはね 今度の音楽会の最後に連弾をしてもらいたくてね」
私は驚き校長先生を見る
「私はこうみえても音楽が好きなんですよ。
君達の通っているピアノ教室の校長とは懇意にしていて
君達の事は前々から耳にしていたよ。」
私は「ありがとうございます」と小さな声で言い
ペコリと頭を下げた。
「昨年もね、藤原君に打診したら森さんが学園生活に慣れていないから
と断られたのだけれど、森さんももう、学園になれたよね。」
そんな話があった事も知らなかったので驚き海斗を見ると
そこには以前、クリスマスに小児病棟へ行こうと言い出した顔があった。
(断る選択肢はないな・・)と心の中で呟いた。
学校からの帰り道
「何を弾こうか?」
「試験も控えているから新しい曲を弾くよりは
今まで弾いてきた曲の方が良いよね?でも、この話を受けた時から
曲も決まっているでしょう?」
「バレた?」
(やっぱりね・・海斗は用意周到だからね)
「私が海斗と一緒に全校生徒の前で弾いて良いのかな?」
「なに言っているの?他に誰と弾くの?」
「そうじゃなくて そもそも 音楽会で今まで
ピアノを誰かが弾くとか無かったでしょう?
去年も各クラスの合唱だけだったよね」
「そうだね。でも全くゼロだった訳じゃないと去年、
校長先生も言っていた。ここ何年かは該当する人が居なかったからと」
「該当者?」
「そう、校長先生はピアノが弾ければ誰でも良い訳じゃなくて
コンクール入賞者が大前提らしいよ。
保護者も来るから中途半端なピアノだとね・・」
(そうじゃない。私が話さないといけない事はそれじゃない!)
「海斗、王子様って呼ばれているのを知っている?」
彼は少し赤くなり困った顔をした(そりゃ知っているよね・・)
「その王子様と中坊の私が一緒にピアノ弾いたら王子の評判が・・」
「なんの評判?」
「王子の評判」
「王子なんて呼ばれている時点でお飾りと同じ扱いだよ。
別に俺の内面を想ってくれている訳じゃないでしょ」
その言葉に日々の苦労が垣間見えた気がした。
「杏那だって色々言われているでしょ?」
(気づいてくれていた)それだけで心がホッコりする
「まぁね。中1の時は平和だったね」
「そうだね。杏那が嫌じゃなかったら弾こう。杏那は俺にとって特別だから」
(特別って何が?スキ?それとも 家族?として? 怖くて聴けない・・
でも今聞かないと一生きけないかも)
「と・「藤原~」」聞こうと思った時に声が被る・・
あ~君と落合さんが私達を呼び止めた・・
聞くタイミングを失い言葉を飲み込む。
駅までの道のりを足取り重く歩く・・
やっぱり落合さんは海斗と あ~君が話し込んでいると
刺すような視線を私に投げる・・
ズキっと痛む胸・・
私が落合さんに何かしたら解るけれど・・
私何もしていないのに・・
そもそも、落合さんとこうやって何回か
一緒になる事はあっても口を利いた事すら無い・・
それなのに敵視されるのは辛い。
でも、何も口に出来ない・・
海斗とあ~君の友達だから・・
狡い・・そう思う私がもっと狡いのかも・・



