幼馴染に恋をして(杏那ver)


翌朝、小学校の時よりも明らかに早く起きて身支度を整える・・

鏡に映った私は少しは海斗に近づけているのだろうか?

くよくよしても仕方が無いと自分の頬を二回ペチペチ叩いてリビングに出ると

「おはよう」と海斗が何時もの席に座っている・・

「海斗!どうしたの?」

「杏那、約束忘れちゃったの?」と悲しそうな顔をしたような気がした・・

「忘れるわけないよ。海斗が忘れていると思った」

「俺が言ったのに忘れるわけ無いでしょう」

と笑ってくれる海斗に
昨日のお風呂場での事はすっかり忘れ去られた。

ママが「海斗君、杏那とそこに並んでくれる?」と言って私達を並べた・・

パパはカメラでママはスマホで私達二人を写す。

「ママ、その写真私に送って」

「いいわよ、送るわね」

「千歌ママ、僕も欲しい」と海斗が言ってくれた時は凄く嬉しかった。

私はその日から待ち受けをその写真にした。

学校に登校して担任から明応中学一年の朝は他の学年よりも
登校時間が20分早いと説明を受けた。
登下校時のトラブルにあっても授業開始に間に合うようにとの話に
私達は納得しつつもそこまで子供じゃないのに・・と誰もが思ったと思う。

そして今朝、学校近くに来ても生徒の数はチラホラしか
見当たらなかった理由に合点がいったが、
同時に海斗に迷惑をかけてしまうと思い、切ない思いを抱えながら

「一人で登校する」と話したら

「早く登校するには何の問題も無い」と一蹴された。

その言葉に甘え、私は念願の隣を満喫していた。

家で話すのとは違う二人きりの会話・・

親には聞かれたくない話し、
二人だけの秘め事のようでワクワク、ドキドキが止まらなかった。

ある朝、海斗は

「杏那、僕は医学部に行くよ。」

「???」何故今、口にするのだろう?

「上位5名は希望すれば、明応大学医学部に推薦で進学できる。僕はそれを目指している」

まだ入学してテスト一つも受けていない私に海斗が今言う理由を考えた・・

私が小さい時に勉強に飽きると海斗に遊んで欲しくて

「勉強より杏那と遊んで!」と言うと

「決めたところまで終わったらね」

「どうして?」

「杏那、勉強はした分だけ結果が出る。無駄だと思う事も何時かは役に立つ。
僕は自分の道は自分で選びたい。」

言葉は難しくて厳しかったけれど優しい目で幼い私に話してくれた
言葉はその時には理解する事は出来なかったけれど
忘れてはいけないと本能的に感じた。

その言葉を思い出しながら私は

「解った。努力する」と言い、海斗を見ると笑って

「うん」と返ってきた。

海斗は自分の進む為に今から目標を持って勉強しなさいと言っている、

明応は入学すると留年はあるけれど肩叩きは無いし

学部を選ばなければ明応大学には全員進学出来る。

だから中には勉強しなくなる生徒もいるとは聞いていた。

私は海斗が「医学部に一緒に行こう」と誘ってくれたと思いたい・・

でも、海斗は押し付ける事はしない・・・

小児病棟でピアノを弾く時も相談だった。

言葉の奥を探らなければ断る事も出来るように
何時も違う道も選択出来るようにしてくれている。
だからこれも海斗の最大限の誘い言葉だと思う事にした。

私もこの時に医学部を目指す事を心に誓った。

細かい事は後から考えればいい・・

この先、他に遣りたい事が出来たら考えればいい・・

今は選択出来るように自分が出来る事をしようと、海斗の背中を見て思った。