明応中学の入学式が無事に終わり私達家族と海斗は4人で森家に帰る。
私は海斗からの「明日、朝迎えにくるから」と言う言葉を期待して待つ・・
でも、海斗ママが迎えに来て帰る時も何時もと同じように
「ご馳走様でした。お休みなさい」とだけ言って扉を閉めた・・
いつも通りに帰ってしまった海斗に私は絶望し悲しくなった。
そんな顔を誰にも見せたくなくて慌ててお風呂場に逃げ込む・・
私はお風呂場で
「海斗、あの約束忘れちゃったんだ・・やっぱり斉木さんと通うのかな・・」
ママにもパパにも気がつかれないようにお湯に浸かりながら
声を押し殺して泣いた。
そして思い出していた・・
海斗が中学に進学して少し経った頃、
私は海斗の姿を見たくて朝、こっそり見に行った事があった。
海斗の隣にはあのフワフワした髪の毛の斉木心愛さんが居た。
しかも斉木さんも明応中学の制服を着ていた・・
私は、早起きまでしてこの道に来た事を後悔した。
本当は海斗を驚かすつもりだったのに私の方が驚愕してしまった。
海斗に声を掛ける事も出来ないで私は来た道を戻るしかなった
心がザワザワしているのを気が付かないフリをして。
それから暫くたった小学校の帰り道
後ろから追いかけてくる足音に振り向くと海斗が走ってくるのが見えた。
思いがけなく二人で歩く事が嬉しくて
今日学校であった出来事を次から次へと喋りだしていた。
でも、その嬉しさも一緒にエレベーターに乗り
鏡に映った海斗と私の姿に悲しくなった・・
身長が急に伸び中学の制服を着ている海斗と
赤いランドセルを背負ってスクール帽子を被っている私・・
幼さが際立っていた・・
私は慌ててスクール帽子を取るが髪の毛はぺシャンと潰れ
静電気でフワフワ何本か揺らいでいた・・
(みっともない・・)切なさだけが映し出す鏡を睨みつけ
心の中で全然 お似合いじゃない・・
鏡に映る現実に絶望し、斉木さんと海斗のあの日の姿が
フラッシュバックをしたのを覚えている。
あの二人の姿を思い出すたびに胸がチリチリと痛んだ。
きっと、あの時よりも もっと今の二人はお似合いなのだろう・・
あんな子供の時の話を真に受けて私は馬鹿だな~
学校で二人を見るなんて辛すぎる・・
明応中学選んでしまった事を今更ながら悔やんだ。
明日からの登校の話は何もしないで帰宅していった
後姿を思い出し仕方が無い・・
制服の海斗とランドセルの私じゃあ海斗は私が海斗に抱いている恋心と
同じ感情を持てるはずが無いのはあの日に思い知っていた。
私は湯船に仰向けに身体を伸ばしそのまま顔まで沈んで
流れた涙を無かった事にした。



