幼馴染に恋をして(杏那ver)


2月1日

私は母と明応中学の門を潜る。

そこは一種のカオス。

足を踏み入れたことがある人しか経験する事の出来ない
異様な光景が繰り広げられている

何台ものTVカメラが受験生の私達を捉え、
校門から校舎まではあらゆる塾の先生方で花道が出来ているそこを
12歳そこそこの小学生が自分の進む道に向かって歩く・・
私も塾の先生に激励され校舎前で母と別れ
一人下駄箱で靴を取り換えていると
眼下に明応中学の上履きが立った。

「杏那、落ち着いて頑張れ。杏那なら大丈夫だ。待っている」
と口にしながら私に下足入れ差し出す。

それを受け取る瞬間 ほんの一瞬海斗の右手が私の左手を握った。

離した掌にはカイロが入っていた。
(海斗、カイロ持っているよ。海斗が必要と言ったから・・)

私が持参したカイロはそのままリュックから出されることは無かった。

そして合格を誰よりも喜んでくれたのは

カイロを手渡ししてくれた人だった

「杏那、よく頑張った。おめでとう」

海斗は何時も私が元気になる言葉をくれる。
海斗の言葉は何時も私を幸せにしてくれる。