幼馴染に恋をして(杏那ver)


学校に一緒に通えない事を補うかのように私は海斗との放課後を楽しんだ。

海斗が勉強していると私も勉強し、

海斗が読書をすると私も隣で本を読んだ。

その中でも二人で弾くピアノは一番楽しかった。

はじめは悪戯心から連弾もどきをしていたのが

いつの間にかそれが発表会の最後のお披露目曲になり、

ピアノ教室の校長先生の頼みで老人ホームのクリスマス会で弾いたりして、
お披露目する機会が増していた。

そんなある年、海斗から

「杏那、クリスマス会、今年は病院に行きたいと思っているけれど、どう思う?」

「病院?」

「そう、出来れば小児病棟。」

私は海斗の顔を覗き込む・・

海斗は続けて
「勿論、老人ホームも有意義だとは思うけれど・・
小児病棟はクリスマスに家に帰れない子の集まりだから・・少しでも・・」

「海斗、私達学生だよ。小児病棟に入れるのかしら?」

「ムリだと思う。だから僕たちが例えばロビーで弾いてそれを階上から見えるような・・」

そこまで具体的な言葉に海斗はもう何処の病院か決めていると思ったから

「良いよ。今時の曲をアレンジして貰おうね。」とだけ言うと

「サンキュウ」と満面の笑みにドキドキが止まらない・・

あ~神様私はこの笑顔でどんな難しい曲だって弾けます。

一生懸命弾くので海斗の崇高な願いとは真逆な邪な私を許して・・

私は小学校の6年間を勉強と空手、ピアノに費やし。

必ず明応中学に受かる。

その思いを実現するために私は自分で退路を断った。

明応中学以外は願書を出さなかった。