私(森 杏那)は2歳年上の 藤原海斗が大スキ。

物心ついた時から誰よりも好き。

だから何時だって海斗の隣は私が居られると信じていた。

だけど違うって事に気が付いたのは幼稚園の時・・

朝、小学校に登校する海斗の隣に居たのは
髪の毛がフワフワしている女の子。

次に見た時もその子は海斗の隣を歩いていた・・

海斗のママはお仕事をしているので
海斗は学校が終わると我が家に帰って来て
一緒にピアノや空手、スイミングに行き
夕食を食べて迎えに来た海斗ママと帰って行く。

それが平日の過ごし方。

私達は同じ空間で同じことをして、同じ物を食べて時を重ねた。

分かち合うのは海斗とだけ。

だから海斗もそうだと思っていたのに

海斗の隣に歩く女の子に幼心にも嫉妬した

「あの子は誰?」と小学校から帰ってきた海斗に聞けばいいのに私は聞けなかった。

もう少ししたら私が小学校に行くようになったら隣は私だから・・

もう少しの我慢・・

海斗を困らせない様に・・

我慢・・

そう思って我慢していたのに・・

小学校に入学する年のバレンタインデーに海斗の家での食事会時に
私は地獄に突き落とされる・・
私が何気なく口にした言葉・・

「私が小学校に行く時は隣に海斗が何時も居てね。」

「・・・・」しばし皆が沈黙する。ママが

「杏那、杏那は海斗君と一緒には行けないの。」

「どうして?」

「家は近いけれど行く小学校は違うの・・」

「いや~杏那は海斗と一緒に行くの。」

「それは無理なの」

「いや~小学校になったら海斗と一緒に行けると思っていたから我慢してきた」
と言って泣き出した・・

海斗が「杏那、何を我慢してきたの?」と優しく聞いてくれる

私は「海斗は何時も女の子と一緒に歩いている・・海斗の隣は杏那なの」

「???」

「海斗は朝 学校に行く時に隣に何時も同じ女の子がいる。
髪の毛がフワフワしている・・」

「あ~斉木  心愛(ここあ)ちゃんね。
杏那ちゃん心愛ちゃん見た事あるのね。
心愛ちゃんのお家はエレベーターの直ぐ前の部屋の女の子で
海斗と同じ年だからよ。」と海斗ママが教えてくれた。

でも一緒に行っている事には変わりない。

「杏那、僕と斉木は友達じゃない」

「でも・・杏那は海斗と同じ学校に一生行けないの?」

暫く海斗は何かを考えるように黙る・・そして意を決したように

「杏那、僕は行きたい中学がある。
杏那も一生懸命勉強したらその学校に一緒に通える。
杏那 頑張れるかい?」と魔法の言葉をくれた海斗。

「うん。頑張れる」

「じゃあ約束だ。杏那が頑張って一緒の学校に通えるようになったら毎朝迎えに行く」

「本当?」

「約束する。だから泣くな」

私はこの遣り取りだけで海斗の目指した学校に行く事を決心し。

その言葉を糧に努力しようと幼心に誓った。

それでも私は心の何処かで未だ同じ小学校に通えると思っていた。

入学して絶望し帰宅後 私はベッドに突っ伏して泣いた。