「リリカちゃん」

最初に口を開いたのは意外にも萌奈だった。

私の名前を呼んだあと、萌奈は強張った表情のままポツリポツリと言葉を紡いだ。

「さっきの……全部本当のことなの。私ね、中学時代……イジメられてたの。クラスの子達から無視されて、部活でも仲間外れにされた。あの頃の私はいつもひとりぼっちだった」

萌奈の声が震える。途切れ途切れの言葉に胸が苦しくなる。

「中二の夏、夏祭りに誘われて行ったらさっきみたいにバカにして笑われて……。でも、私本当にバカなの。あんなにイジメられてて、突然イジメがなくなるわけないのにね。それなのに期待して浴衣まで着ていって。あの日ね、心がぽっきり折れちゃった。それで――」

「いいよ、萌奈。無理しないで」

あたしはスカートの上で震えている萌奈の手をギュッと握り締めた。

「死のうと思ったの。苦しくて、辛くて、もう耐えきれなくて。弱かった私は全部捨てて逃げようとした。でも、結局失敗して……」

ボロボロと堰を切ったように涙を流す萌奈は必死に涙を拭う。

「救急車の中で意識が戻ったとき、お母さんは『よかった。生きていてよかった』って泣き叫んでた。でもね、私は死ねなかったことに絶望して泣いたの。私はそういう自分勝手な人間なの」

「うん」

「あの時、私は自分のことしか考えてなかった。家で首を吊って死ねばどうなるか、今考えればすぐに分かるのに。それをキッカケに学校にも行けなくなって親にもたくさんの迷惑をかけちゃった……」

萌奈は後悔しているんだろう。

自殺を図り自ら死を選んだことで親を傷付けてしまったことを。あたしは萌奈の手を握る指に力を込めた。

「逆にさ、それほど追い込まれてたってことでしょ。周りのことを気にする余裕がなくなるぐらい当時の萌奈は辛い想いしてたんだよ。辛くて、悲しくて、どうしようもなくなったから逃げようとした。それを萌奈のお父さんもお母さんも責めたりはしないよ。迷惑とかそんなこと思ったりしない」

萌奈のお母さんを一目見た瞬間に感じた。