駅ビルを出て家に向かって歩く。
萌奈はずっと無言だ。さっきの出来事を気にしているのかもしれない。
こういうときなんて声をかけたらいいのか分からない。
親に教えてもらったこともない。ただ、漠然と思う。元気を出してほしいと。
「ねぇ、萌奈。ちょっとそこの公園に寄ってかない?」
あたしが近くの公園を指さすと、萌奈は小さく頷いた。
広々とした公園に足を踏み入れてベンチに腰掛ける。
ベンチはLED照明に照らされて夜だというのに明るい。
いくつかある他のベンチには恋人同士と思われる男女が座り楽しそうに言葉を交わしていた。
ベンチに座ってから数分間、あたし達は互いに口を開こうとしなかった。
静かな時間が流れていく。