「やったぁーーー!!ちゃんと自分の気持ち言えたじゃん!!偉いぞ、萌奈~!」

リリカちゃんはパイプ椅子を倒す勢いで立ち上がると、私の髪の毛をクシャクシャとかき回した。

髪はぐしゃぐしゃだし激しくやられすぎてちょっぴり目が回る。

そのとき、リリカちゃんのYシャツの袖ボタンが私の髪の毛に絡んだ。

「いたたっ」

「あっ、ごめんごめん。ちょっと嬉しくて調子に乗っちゃったよ。待って、今とるから」

リリカちゃんはそう言うと袖ボタンを外し、絡まった私の髪の毛とボタンを引き離した。

「リリカちゃん、どうして長袖のYシャツ着てるの?」

もう衣替えも済んでいるというのに。

「あー、たまたま。今日手に取ったのがこれだっただけ」

「そうなんだ……?」

「よし、取れた!じゃ、ゆっくり休んでよ」

袖ボタンを付け直すとリリカちゃんは私の肩を優しく押した。

「リリカちゃんも休んだ方がいいよ」

ごろりと横になった私はリリカちゃんを見上げながら言った。

「なんで?あたし全然疲れてないよ?」

「朝見た時から思ってたの。いつもより疲れた顔してるって。何かあったの?」

「え~?何もないって」

リリカちゃんの表情がほんの少しだけ強張った気がする。