「ねぇ、先生。もうあたし死んじゃいたい」

放課後になり、扉を開けて教室の一番後ろの席に座っていた女子生徒に近付いていく。

彼女は一人で涙を流していた。

私はそっと彼女の元へ歩み寄り、背もたれを抱きしめるように後ろ向きに座った。

リリカちゃんも昔こうやって私の顔を覗き込んだ。

『ははっ!そんなかたくなに嫌がんないでよ!』

もうあれから10年が経ったというのに、いまだに彼女の声をはっきり思い出せる。

私は中学教師になった。リリカちゃんに話した夢を私は実現させたのだ。

「辛いことがあったの?」

「うん……」

「そうだったのね」

私は小さく頷いてから彼女に微笑んだ。

「昔ね、私も死にたいって思ったことが二度あったの」

「え……?」

彼女が涙でぐちゃぐちゃな顔を持ち上げる。

「一度目はイジメに会った中二の頃。今のあなたぐらいの年齢の時ね」

「二度目は?」

「大切な親友が亡くなったとき」

「え……」

「彼女を失って生きていく理由が分からなくなってしまったの」

「そうなんだ……?」

彼女の涙がピタリと止まる。