「ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー」

私はちょっと照れながら手拍子を交えて誕生日の歌をうたう。

こんな風に友達の誕生日を祝ったのは始めてだ。

「ハッピバースデ-ー、ディアリリカちゃーん」

リリカちゃんの顔がろうそくのオレンジ色のゆらゆらと揺れる光に照らされる。

すっぴんだからだろうか。普段よりあどけない表情のリリカちゃん。

「ハッピバースディトゥーユー!!リリカちゃん、17歳のお誕生日おめでとう」

私が言い終わるとリリカちゃんが物凄い勢いで息を吸い込んだ。

そして一吹きですべてのろうそくの火を消した。

真っ暗になる部屋の中。

急いで部屋の明かりをつけると、リリカちゃんが肩で息をしていた。

目からは大粒の涙が溢れている。

「り、リリカちゃん大丈夫!?」

「全然、大丈夫!ていうか、一回で全部消せたよね!?」

涙を手の甲で必死に拭いながらろうそくの火が消えているのか何度もチェックしているリリカちゃん。

ティッシュ箱を差し出すと、リリカちゃんは何枚か引き抜いて鼻をかんだ。

「消えてるけど、何回かに分けてもよかったのに」

「ダメだよ!!ハッピーバースデーの歌をうたってもらってる間に願い事をして、ろうそくを一息で全部消せたら願い事が叶うんだから!!」

リリカちゃんは力説する。

「そうなんだ。初めて知ったよ。リリカちゃんは何をお願いしたの?」

「えー、それはナイショ」

「秘密にされると知りたくなるなぁ」

ケーキをカットしようとすると、

「待って!!写真撮りたい!!!」

リリカちゃんが慌てて制止した。