「その反応って……えっ、まさか知らなかった……?えっ、どうしましょう。私ってばてっきり……」

「いえ、いいんです」

私は首を横に振った。

そうか。リリカちゃんがうちにやってきたあの日、リリカちゃんは斎藤さんに私の話を聞いていたのだ。

『あそこのスーパーはこの時間お弁当が半額なんだとか、そんなことばっかりしゃべってたよ』

リリカちゃんはきっと私の為を思って黙っていてくれたんだろう。

『ねぇ、萌奈。言いたいことは頭で考えてるだけじゃ相手に1ミリも伝わらないんだよ。言わなきゃ分かんないよ。分かってあげられないよ』

あの時、リリカちゃんは子供でも諭すかのような口調で言った。

『なんかあったらあたしに言ってよ?絶対ね?』

『一人で抱えこまないでよ?』

心配そうな表情を浮かべるリリカちゃんの言葉が蘇る。

私の知らないところでリリカちゃんは私を気遣ってくれていたんだ。

イジメられていたことも、自殺未遂をはかったこともリリカちゃんは私が自分で話すよりもずっと前に知っていたんだ。

でも、リリカちゃんは私に言わなかった。黙っていた。過去の私を含めてまるごと受け入れようとしてくれた。

全部知ったうえでこんな私のそばに……私と一緒にいてくれたんだ。

「おばさん、ありがとうございました。リリカちゃんをうちに案内してくれて」

「でも、本当に……何と言ったらいいか……」

余計なことを言ってしまったと思ったのか、おばさんはひどく狼狽えている。