向かった先は我が家だった。

リリカちゃんはうちを見上げてたじろぐ。

「無理だって。こんなびしょ濡れの体で家に入れないから!!」

「その格好でフラフラしたたら風邪ひくよ?」

「それなら自分の家に帰るから大丈夫だって」

頑なに拒むリリカちゃんの背中を押してあたしは半ば無理矢理我が家へ引き込んだ。

このままあの家に帰すわけにはいかない。

娘の誕生日だと知っていながら「リリカに会ったら、今日は帰ってこないでって伝えて。たっくん、ちょっと疲れてるみたいだから」というような母親の元へ帰したくないというのが本音だった。

母には来る途中、ラインでリリカちゃんを連れていくことと体が濡れているからお風呂を沸かしてほしいと頼んでおいた。

家に着くと待ち構えていた母がタオルや着替えをリリカちゃんに手渡した。

「お風呂、もう沸いてるからゆっくり入ってね。それとこれ、使ってね。シャンプーとかボディーソープは浴室にあるから」

「いえいえいえ!!そんな――」

「遠慮しないで。はい、いってらっしゃい」

「で、でも――」

最後まで拒んでいたリリカちゃんも最後は根負けしたようだ。

私は自室に行き私服に着替えると、リビングにいる母に声をかけた。

「お母さん、今日リリカちゃんの誕生日なの。だから、お祝いをしたくて」

「あらっ、そうだったの?」

「うん。今からケーキ買ってくる」

「分かったわ。夕飯は?リリカちゃん、おうちで食べるかしら?」

「あのさ、お母さん。ちょっとお願いがあるんだけど……」

「なに?」

「詳しくは話せないんだけど、今日……リリカちゃんをうちに泊めてもいい?」

「えっ」

「ごめんね。急に。でも、どうしても今日リリカちゃんと一緒にいたくて。ダメかな?」

そう尋ねると、母はにっこりと笑った。