ああ、あたしって一体何なんだろう。自分の存在意義が分からない。いや、むしろ一度だって分かったことはない。ただ無常な気持ちが募っていく。

なんとか母をベッドに寝かせるとどっと疲れた。

仕事だと家を出て行ったのはやっぱり嘘だったのだ。

本当は母を罵って怒りをぶつけたかったけれど、それは出来なかった。

もうほとんど意識がない中で母は男の名前を繰り返し涙を流す。

その日。あたしは幼いながらに気付いてしまった。

あたしは母の1番ではないし、特別な人間でも必要とされている人間でもないと。

あたしにとってあの頃の1番は母だったし、どんなにひどい扱いを受けても母はあたしにとって必要で特別で大切な人間だった。

母がいなければあたしは一人で生きていくことも叶わない。

お金だってない。ご飯だって一人で食べるのには限界があるし、身の回りのことだって完璧になんてできない。

「産まなければよかったなんて、言わなくてもいいのに」

本当は辛くて泣きたかったけど、笑った。幸せになりたかったから

もしかしたらまだ訪れていない幸せがふわっと逃げてしまわないように……。