「はい。来てくれました」

「あの日ね、本当にしつこかったのよ、彼女。どうしても知りたい。あなたに会いたいって。電話したらいいじゃないって言ったんだけど、直接会いたいって」

「リリカちゃんがそんなことを……」

「私ね、一橋さんと青木さんっていい組み合わせだと思うのよ」

「え……?」

「だって、今は青木さんが一橋さんの心配をして私のところまできた。あなたたちはお互いが思ってるよりもずっといい関係にいるわ」

いい関係。先生の言葉が胸にストンっと落ちてくる。

「そういう友達を見つけるのってとっても難しいのよ。彼氏を作るよりもずっとね」

先生はふわっとした笑みを浮かべた。柔らかくて温かくてなんだかホッとする笑顔だった。

「あのっ、先生。一つお願いがあって……」

「うん。なぁに?」

「リリカちゃんの住所……教えてもらえませんか?」

先生はふふっと笑った。

「本当はダメなんだけど、特別よ」

そう言うと、先生は名簿を取り出しメモに住所を記した。

「あらっ、今日一橋さんってば誕生日じゃない」

「そうなんですか?」

「うん。今日で間違いない」

先生はリリカちゃんの生年月日の欄を指でトントンっと叩いた。