昨日の夜、痛めつけられたせいで体中がひどく痛む。

高橋は昨日も酔っぱらっていた。

アパートの扉を開けると、中からむわっとした酒の匂いが勢いよく鼻に届いた。

母もべろべろに酔っぱらっている。母は最近、仕事を辞めたようだ。

昼間から酒を飲み、仕事に行っている形跡はない。

それと同じくして高橋はうちに住み着くようになった。

『お前、俺の電話を無視しただろ!?』

虫の居所が悪かったのか帰ってきたあたしを見るなり高橋は悪態をつき絡んできた。

それを無視していると、手が出て足が出た。

髪を引っ張られ、フローリングの床に顔面を押しつけられた。

埃っぽい床はザラザラであたしは必死になってその手から逃れようとした。

『お母さん……』

隣の部屋の隙間から顔を出した母と目が合った。

助けを求めるように手を伸ばすと、母はぴしゃりと扉を閉めた。

『離して……―!!』

抵抗する私の頭を高橋は汚い足で踏みつける。

『お前みたいなガキ、いらねぇんだよ!!』

背中に強い衝撃を受け、あたしはそこで意識を失った。

気付いた時、部屋の中には高橋も母もいなかった。

床の上にうつぶせのまま道路でひかれたカエルのようにひっくり返っていた。