誘惑じょうずな先輩。



デリカシーないこと聞いてくる先輩に、
ちょっと戸惑いながら唇を少し噛んで、言う。



「……そうです、けど、なにか」



動揺が表れすぎて、自分でも笑っちゃう。


でも、先輩からしたら100回くらいは軽くちゅっちゅしてるだろうから、わたしのファーストキスがどうのこうの、なんて興味ない話。



バカにされるんだろうな、って思って、癪だったから、先輩をキッと睨んであげた。



ちょっとは(こた)えてくれるかな、と思ったけど、なんでかわかんないけど先輩はちょっと目を見開いたあと、右ななめ上を向いた。





「あー……、やっぱ、そっか、あぶねーの」



口許を抑えて、小声であぶねーとかなんとか言って。

あんなに離れてくれなかったくせに、いまになって、そっとわたしから距離をとった先輩。


それはそれで寂しくて、体温がなくて、離れてほしくないって思った、矛盾。



また、口調が男っぽくなって、胸がギュン、て危ない音が鳴った。