「ふだんツンツンしてるゆんちゃんの、
奇跡のデレに俺、きゅん死にするかと思ったんだけどー……」
わざとかなんなのか、耳元でそんなこと言うからこそばゆくて身をよじる。
……あのね、先輩。
こっちは先輩に会うたびにきゅんきゅんしてるんだよ。
ぴったりくっつく先輩を感じて心臓飛び出しそうになってるんだよ。
だから、いきなりの先輩の登場にまごついて……、というか!
「な、なんで先輩がいるんですか……っ、」
あまりに驚きすぎて大事なことを忘れるところだった。
だって、前みたいに、偶然通りかかったわけでもなさそう。
なんたって、先輩のお友だちはそばにいないし、移動教室ではなかったっぽいから。
「えー……、たまたま窓からガッコ見てたら、中庭にゆんちゃんいたから?」
「そ、それだけ、で……?」
うそ。
そんなわたしを喜ばせてどうしたいの、先輩。
期待なんて振り払いたい。
だけど、そうさせてはくれない。
わるい人、万里先輩。



