誘惑じょうずな先輩。



ふたつしかないベッドのひとつを占領していた先輩は、少し離れたところで委員専用のイスに座っていたわたしに、ちょいちょいと手招きした。


……あ、誘惑。



グラグラ揺れる理性に、
とりあえず落ち着け、と命令する。



先輩のネクタイが緩みすぎてる、とか、先輩の匂いが好きな香りに変わった、とか、そういうのぜんぶ忘れる。


それで、誘惑には、乗らない。




「、なんですか」



ほんっっとかわいくないわたし。


ぶっきらぼうに出た言葉。

そんなわたしに、先輩は目を細める。




「こっち来な、ってこと」



なんで。

そんなこと、言えるわけないけど。



先輩にとっては、あまり深い意味なんてないから。

気にしすぎてるのは、いっつもわたし。