誘惑じょうずな先輩。



「ふーん……、なるほど」



聞いたお友だちも、首を傾げ、頷いた。



「それじゃ、ゆんちゃんとお友だち……ココちゃんだっけ?
引き止めちゃってごめんねー」



万里先輩の声に、はっとする。



待って……、はやく着替えないと、次の授業に間に合わない!



顔を青ざめて胡子ちゃんを見ると、グッと親指を立てて、こくりと首を縦に振った。



「急ぐよ、ゆん!」




ダッと廊下を駆け出した胡子ちゃんに頷きながら、先輩にかわいくないひとことをお見舞する。



「……今日は、来ないでください、」



なんでそんなことを言ってしまったのか、わからない。


けど、ちょっと考える時間が必要だったんだと思う。


これ以上、今日、また先輩に会ってしまったら。


矛盾が交差して、先輩に当たってしまいそうで、不安で。




言って、わたしが去ったあと、先輩がお友だちとこんな会話をしていたなんて、知りもしなかった。