苦しそうに呻く胡子ちゃんに不思議だという意味の視線を送ると、彼女はまた、ため息をついた。
「悪い男には引っかからないでよ、お願いだから」
それは、遠回しに、万里先輩のことを言ってるのかな……?
万里先輩は悪い人じゃないよ、って言いたかったけど、その答えは考えたら正解じゃない気がしてやめた。
男、としては悪い人だと思う、女から見れば。
きっと、夢中になって、周りが見えなくなってから気づくんだと思う。
特別なのは、自分だけじゃないんだって。
「気を、つける」
でも……。
『ゆんちゃん、もっかい抱きしめさせて』
先輩の毒が回って、拒否することができないんだ。
胡子ちゃんにも、それは絶対に見抜かれている。



