誘惑じょうずな先輩。



うん、と頷くわたしをみて、先輩は続ける。



「俺が女の子たちから逃げてる理由、ゆんちゃんに聞かれたけど答えなかったでしょ」



言われて、思考が飛ぶ。






___ そうだ。


思い出す、あの日のこと。




『なんで、女の人から逃げていたんですか……?』



わたしは確か、そう尋ねたんだ。


だって、かの有名な先輩が、遊び人で有名な万里先輩が女の子から逃げてるんだもん。


不思議で、よく理解できなくて。


だから聞いたのに、先輩は、おかしそうに笑って言ったんだ。




『そういうときもあるんだよ』



……って。



あのときは、わからなかった。


でも、いまはなんとなく、わかる気がする。





「たぶん、俺は。

だれかを本気で好きになって、それでいて、だれかに本気で好きになってほしかったんだと思う」




あるとき突然、空虚感に襲われるらしい。



“ 俺、なにしてるんだろう ” って。