誘惑じょうずな先輩。



もっと愛先生と話したい気持ちはあるけど……、でもやっぱり、先輩といたい気分かも。


万里先輩は、わたしの……オンリーワン、だから。



我ながらクサいこと言った。


まあ、……心の中だけ。


先輩には……、ぜったい言ってあげない。




「いいよ、楽しんでおいで。若者たち」




ヒラ〜と手を振る愛先生の軽さはいつもどおりで、先輩がわたしの手を握って保健室を出るのもいつもどおりだ。



その“ いつも ” が大切なものなんだと、万里先輩に出会ってから頻繁に実感している。

そういう、大事なことを気づかせてくれる、最高の、彼氏だ。




連れられるのは、今日も、安定に中庭。


運良く、だれもいない。





「ねえ、俺がゆんちゃんにはじめて会ったときさ、」




わたしがしゃがんだあと、そう切り出す先輩。


こんなこと言ってはなんだけど、珍しく、話し方が真剣だ。