誘惑じょうずな先輩。



「ちょい、ゆんちゃん」


「……、?」



「腕、はなして」



「……やだ」




「うーん……」




珍しいくらい、子どもっぽくなってる。


鼻声だから、よけいによくわかんない感情に呑まれて胸が苦しい。




「風邪、悪化するから」




あと、俺のゆんちゃん病が悪化するから。


言わないけど、わかって。




熱あるんだったら、喋るのもしんどいでしょ。


そんな心配しなくても、俺、別に逃げないし。




「せんぱいがきてくれるなら、いい」



「……もう、なに言ってんの、」




かわいいかわいい、頭抱えるレベルで愛しい。



ちょっと涙目とか、ゆるい部屋着とか、すっぴんとか。


ぜんぶ見ないフリしてたけど、……限界かも。




こっちは、早く寝かせる方法ないかめっちゃ考えてるから。


お願いだから、誘惑しないで。


弱いから。