誘惑じょうずな先輩。



「呼びません」



いつもみたいに、ふいって顔を背けるんじゃなくて、プイって向いてあげた。

強い意志の、決意証明。



流されるチョロい女ではありたくない。



だけれど先輩、見た目によらず頑固らしい。



「おーい」


「……っ知りません」




「ゆーん」


「なんですかっ、」




「リピートアフターミー。はい、万里」


「……先輩、子どもですか」




呆れたフリしてみたけれど、内心きゅんきゅんしてる。



緩そうだけど、やっぱり予想外で、なんだか構いたくなる、そんな罪な先輩だから。


万里先輩が喜ぶんだったら、呼んであげてもいいかな、なんて思わしてくるでしょ。



……そう考えた時点でわたしの、負け。





「万里って呼んでくれたら、ゆんちゃんの好きなハーグンダッツ、奢ってあげるよ」