誘惑じょうずな先輩。



「先輩」


「……んー?」



「なんで、顔背ける、んですか」


「…………、」



「万里先輩、」



「……なんで、急にそんな積極的なの、」



困ったようにわたしをチラッとみた先輩だけど、すぐにまた目をそらす。


まるでわたしを見ないとでも言うように。



でも、気づいちゃった。

……先輩の耳、少しだけ赤い。



さっきとは立場逆転。

先輩が、追いつめられてる。



「先輩に、我慢とか、しないでほしい、からです」



わたしといることで苦しい想いとか、ぜったいにさせたくない。


先輩がなにを求めるのかは想像もつかないけれど、わたしにできることならばなんでもする。



わたしの想いは伝わったのか、そうでないのか。


やっと、先輩と目が合った。





「……ゆんちゃんは、なんにもわかってない」



「……え、」



……と思ったら、否定形。

わたし、失敗したかもしれない。





「だから、俺の思考回路とか知ったら引くって言ったじゃん」



「な、……んで」





「そりゃー……、こーゆーこと」