誘惑じょうずな先輩。



好きすぎるのも、辛い。


怖いくらいに、自分がわからなくなる。




堕ちすぎて……、どうしたらいいの。


先輩が、優しいから。

先輩が、先輩だから。


底知れない沼にハマって抜け出せなくて。



苦しくて、見失なって、スマホをぎゅっと握りしめた、____ そのとき。





「、……っ、おまたせ」




「せ、先輩、……っ」






……今日は窓じゃなかった。

開いている扉から、入ってきた。


額に汗が滲んでいるし、息も少し荒いから、階段を駆け下りて廊下を走ってきたんだとすぐに気づく。


そんなに必死に……、わたしのために……?

ズルい、ズルい。




「せんぱ……っ、ごめんなさ、い、」



「んー……? なんで、ゆんちゃんが謝んの」





そんなの、決まってるよ。




「……万里先、輩に、会えないと不安、だから」





疲れてる万里先輩。


ムリ、……させちゃった。




自分がいけば良かったのに。



……でも、先輩がこうして来てくれたのが……、どうしようもなく嬉しい。