誘惑じょうずな先輩。



……優しい声だ。


その声を聞いただけで、ぎゅっと胸が苦しくなる。




万里先輩は、たぶん、わたしにはずっとこうやって甘やかしてくれるんだと思う。


歳下だから。

……彼女だから。



わたしだけの特別ななにかが、淡く色づかせる。




先輩は、そういうのをよくわかっている。


あのとき、不安にさせないって言った言葉は本当だ。




足りすぎるほどの愛をくれる。




『 おーい……? どーした、』




スマホから聞こえる先輩のゆるい声。


それさえも愛しい。




……こんなに好きになるなんて、予想外なのに。





「……先輩、」



『 ん、? 』





……わがまま、言ってもいいかな。





「いま、先輩に、とんでも……なく会いたいです、」




『 …… 』




「声だけじゃ、……足りない、です」



『 ……うん 』





「わがまま、で、ごめんなさい……っ、」