誘惑じょうずな先輩。



「……イヤって言われると、よけいに意地悪したくなるのが男の(さが)なんだよ」



そう呟くと、先輩はわたしの顎をひきあげる。

ばちって、目が合う。



……あっつい頰、見られた。



猛烈に恥ずかしさが勝って、先輩からぷいっと顔を背ける。

……先輩の、意地悪。



もう素直さとかどうでもよくて。


先輩の支配する空間からどうしようもなく、逃げたい。



けれど、先輩は、そんなに
……優しくない。




「ゆんちゃん、あのね、ドキドキしすぎ」


わかってるよ。

でもドキドキなんて、速い鼓動なんて、止める方法知らないもん。



「っう、るさいです」



「俺、までおかしくなるでしょ」


「うそだ……っ、」




先輩は、ずっと余裕だ。


慣れてるから、仕方ない。

わかってる。



でも、先輩が甘やかすから、わがまま言っちゃう。