誘惑じょうずな先輩。



ふたりの会話に、先輩のクラスのみなさんがくすくす笑っているのがみえる。

なんだか和やかだなーって。


温かいなって。


サツキ先輩みたいな人が、万里先輩のまわりを囲んでいるという事実に、じんわりと胸が温まった。




最後にもう一度、サツキ先輩たちにお礼を言って、万里先輩についていく。


その途中、いろんなクラスのまえを通るわけで、そのたびに「あ、昨日の」ってささやかれるのはもう慣れてしまった。




まわりの目よりも。

まわりになにを囁かれても。


いまは、うんと先輩しか見たくない気分だ。





連れていかれたのは、昨日とおなじで、保健室。


万里先輩はノックもせずにガラリと扉を開け、中を見渡す。



どうやら今日は、愛先生は不在らしい。




それが、先輩のスイッチを入れるってことは、わかっている、つもりだ。




「やっと、……ふたりっきり」




ひとつのベッドに腰掛け、先輩はぎゅうっとわたしを抱きしめる。