誘惑じょうずな先輩。



「神田には、あいつの心を奪ったとんでもねえ女がいるんだよ」



「とんでもない、女」




「そう。神田を好きになりゃあろくなことないのに、それを物ともしない」


「……、」




「宮川さんには、もっといいやつがきっといるよ」



神田を好きな宮川さんに、この言葉は残酷だと思う。


けど、なんだかいつもよりお節介が増してしまう。



宮川さんが泣いてるのは、なぜかちょっと心が苦しいから。





「そっかぁ……」




どこか、宮川さんにも諦めがついていたのかもしれない。


ちょっと微笑んで、頷いた。



それから、少しの沈黙があった。



どちらも、なにか話すこともなく、ただいっしょにいる。


それを破ったのは、宮川さんだ。




「そういや、夏川ってゆんのこと好きなんじゃないの?」



「香田さん?」




「だってほら……、よく構ってるじゃん」