みんなの前。
全校生徒の前。
……先輩は、わたしの唇を奪った。
ほんの一瞬だった。
だけど、この決定的瞬間をみんなが見ていないわけがなくて……。
「きゃあああああっ!!」
とんでもない騒ぎになって、収集がつかなくなって……。
「せ、せ、先輩のばかぁ……!!」
ななななにやってるの、この人!
色気たっぷりにぺろっと唇舐めちゃったりして……!
恥ずかしくて、いますぐに消えてしまいたい……。
き、キスなんて、
わたし……、はじめて、なのに。
尋常じゃなく熱くなる頰に、先輩は手を添える。
「もっかい、したい、」
「……〜〜っ、だめ、です!」
そう断ると、先輩はわたしの腕を掴んで舞台をおりた。
「なら、ふたりっきりで」
講堂のざわめきから逃げるように……、だれもいないところへ向かった。



