誘惑じょうずな先輩。



「やってきました! 香田ゆのはさん!」



わ〜っ、と謎の歓声が起こる。


先輩の前に、震える足で立った。




先輩は、泣きそうな顔して、儚い顔をして、マイク越しに言った。



「……待たせてごめん、ゆんちゃん」



それだけで、もうなんでも許してしまいそうだった。

だって先輩の声を聞くだけで、心臓が暴れて、ドキドキが止まらなくなるから。



一歩、先輩が近づいてくる。


緊張して、火照ってる頰を見られたくなくて、俯く。

もう、…………先輩しかこの世界にいないのかと錯覚してしまいそう。




「ゆんちゃん、」


「……っ、」




「顔、あげて」




ああ、もう意地悪。